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温もり 2話
「よしくん」
嬉しくて笑顔になった。
yoshiは側にあったボールを手にすると、ポンっとナオの方に投げた。
「よしくん、まだ遊びたいの?」
ナオは嬉しくてボールを拾うとyoshiの方へ転がした。
当然拾うと思ったボールはyoshiをすり抜け転がって行く。
そしてyoshiはまた1人の世界に入って行った。
「凄いじゃないかナオ!」
yoshiの話をすると健人はかなり喜んでいる。
「ナオみたいに反応したのは初めてなんだよ。やっぱり直を相手に選んで良かった」
健人はそう言ってナオをぎゅっと抱きしめた。
やった!兄ちゃんにほめられた!
その日は誉められた事とyoshiが振り返ってくれた事が嬉しくて記憶に残っている。
それから少しずつ、yoshiがナオに慣れていった。
絵本を指差し、意思表示をするようになってきたのだ。
でも相変わらず目は合わせてくれない。
笑ってくれないかなあ?
ナオはyoshiの笑顔を見たくて絵本を芝居仕立てにしてみたり、笑えるアニメを一緒に見たりした。
その日も絵本を読んでいると、ナオに寄りかかるようにyoshiが倒れ込んで来た。
どうしたのかと慌てたら眠っていた。
凄く可愛い寝顔。
つい、頭を撫でたくなる。
でも起きちゃうかなあ?
そんな事を思っていたらドアが開いて健人が入って来た。
「よしくん寝ちゃったよ」
「えっ?マジか」
健人は側に来て、寝ているyoshiを抱き上げた。
「ナオには心許してるみたいだな」
ベッドに寝かせながら健人は言う。
「えっ?」
「こんな風に無防備に寝る事無かったんだ。オドオドして、眠い時は自分でシーツにくるまって寝ていたからね。…周りが怖いとさ、防御したくなるだろ?寝てる時に何かされないように…ナオの側だから安心して眠れたんだ」
その言葉は凄く嬉しかった。
その時からかも知れない。
yoshiを守りたいと思ったのは。
***
その日以来からyoshiは目こそ合わせないけれど、ナオにくっついてくるようになった。
そんな中、ナオは風邪を引いてしまい、寝込む羽目になりyoshiに会えない寂しさを体験した。
弟みたいな存在。
小さくて可愛くて守ってやりたい存在。
「よしくん、ちゃんと兄ちゃんの言う事聞いてるかなあ?」
なんて心配しながら1日を過ごす。
ナオの中では学校が終わったらyoshiに会うのが生活の一部になりつつあったのだ。
健人が帰って来たらyoshiの様子をすぐに聞いてみた。
「今日は元気無かったなあ。ずっとシーツに潜って出て来なかったんだ」
「えっ?具合悪いの?もしかして僕の風邪感染った?」
かなり心配になる。
あんなに小さいから。
「違うよ」
健人はニヤッと笑うと、
「ナオが来なかったからだよ」
そう言った。
嘘…どうしよう嬉しい!
早く風邪を治して会いたいと思った。
*****
結局、風邪の完治に一週間も掛かってしまった。
完全に治さないとyoshiに感染するからと健人に言われたのだ。
喘息を持つyoshiには風邪は大敵である。
学校が終わり、急いで病室に行くと、yoshiがシーツの中で丸くなっていた。
「よしくん」
名前を呼んでみると、顔を出した。
ナオだと分かるとギュッと抱き付いてきた。
「よしくん」
小さい手がギュッとナオの服を掴み、しがみつく。
なんて可愛いのだろう。
小さい温もりが愛しくなった。
「寂しかったんだよね嘉樹は」
ニコニコと笑う健人。
そっか、寂しかったんだ。
ナオもぎゅっとyoshiを抱き締めた。
「一週間もごめんね。また、遊ぼうね」
声を掛けるとyoshiが可愛らしくニコッと笑ったのだ。
うそ…………、
凄い凄い凄い!
笑った!
凄く可愛い!
「兄ちゃん、よしくん笑った!笑ったよ!凄く可愛い」
ナオは嬉しそうに喜んだ。
健人も凄く驚きながら、喜んでいた。
それからは、だんだんと表情も戻ってきて、
ただ、言葉を話さないだけ。
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