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温もり 4話

****** 「兄ちゃん、どうしよう、よしくんが居ない」 半場パニックになりながらナオは健人に助けを求めた。 その日、何時もと変わらずyoshiと外で遊んでいたのに、 ほんの少し、目を離した隙にyoshiが居なくなっていたのだ。  トイレかな?  病室かな?  初めはかくれんぼか何かのイタズラかと思った。 でも、5分、10分と名前を呼びながら捜していく内にパニックになりそうだった。  どこにも居ない!  アメリカは子供への性犯罪が多い。  ナオも学校や健人から注意するようにと言われていたし、誘拐や色んな犯罪に巻き込まれないとも限らない。 事故だって考えられる。 どうしようと泣き出すナオに、  「泣くのは後で出来る!今は捜そう」 健人は優しく諭し、病院のスタッフに連絡をして、大勢で手分けして捜した。  病院の外の可能性もある。  ナオは、 「兄ちゃん僕、病院の外捜す」 と走り出した。  「待て、兄ちゃんも一緒に行くから」 ナオだってまだ子供だ。  1人には出来ない。  yoshiの名前を呼びながら病院の外を捜した。  ***** 病院から数分行った横断歩道を渡ろうとした時に、  「なお」 誰かに呼ばれてナオは立ち止まった。  「どうした?」 急に立ち止まるナオに健人は不思議そうな顔をしている。 「今、兄ちゃんが僕を呼んだ?」 「えっ?呼んでないけど?」 あれ?  確かに名前…? 気のせいかと思った瞬間に、  「なおーっ」 と聞こえた。  健人にも聞こえたようでピクリと反応して、横断歩道の向こうを見つめている。  ナオも同じ方向を見た。  うそ…………、  「よしくん」 横断歩道の向こう、yoshiが半ベソかいて立っている。  ナオは車を無視して走り出した。  「ばかナオ!!」 健人の叫び声を後ろにナオは上手く車を避けて横断歩道を渡りきった。  「な…おっ…」 yoshiはしっかりとナオの名前を呼んだ。  大きな瞳からぽろぽろと涙を零しながらナオに抱き付いてきた。  「よしくん………」 ナオにしがみつき、わんわん大泣きするyoshiを抱き締めてナオも泣いていた。  「すごい………、すごいよ!よしくん喋れたね!」 なお…と確かに呼んでくれた。  ずっとずっと聞きたかった声は凄く可愛くて、自分の名前を呼んでくれた。  「ナオ、嘉樹…」 健人が近付いて来て2人を抱き締めてくれた。 「兄ちゃん、よしくん喋った!すごいよお」 健人にそう報告するナオの顔も大泣きしているから、凄い事になっていた。 「ああ、凄いな」 泣きじゃくる2人の頭を撫でる健人も涙目だった。  凄い、凄い!  ちゃんと喋れた!  僕の名前を呼んでくれたんだ!  そして、3人で病院へ戻った。 yoshiが病院の外へ出た理由はやはり父親に似た男性の後を着いて行ったから。 間違いと気づき、我に変えると知らない場所。 怖くてうずくまっていたら自分の名前を呼びながら必死に捜してくれているナオを見つけた。 いつも、ナオは寂しい時や辛い時に居てくれる。 ここ………… なお、ぼくはここにいる。 立ち上がってもナオは気付かない。 どうしたらいい? 怖くて動けない。 なお、怖いよお。 涙が出てくる。 早く呼ばないと行ってしまう。 いかないで! いかないでナオ! なお! 振り絞った勇気は言葉になりナオを振り向かせたのだ。 それから、  yoshiはたくさん話すようになり、ナオに英語を教わりながら友達も作っていったのだ。  「なお…いっしょ、お昼ねしよ」 yoshiはぎゅっと抱き付いてくる。  「いいよ」 ナオはyoshiをぎゅっと抱っこしたまま一緒にベッドに入る。  「なお…すき」 ぎゅっと抱きつくyoshiは本当に可愛くて、  この小さな温もりをずっと…抱き締めていれたらいいなあ。  なんて思っていた。 

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