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第6話:【可愛いは正義とは本当なのか】はて、どうも今日は聞こえが悪いみたいですねぇ

展示品に使用されている鳥篭のみが唯一商品として並んでいるのだが、肝心の縫いぐるみや籠に止る愛らしい小鳥も売られていなかった。 非売品故レジでは当然会計を断られたが羽を生やした熊の縫いぐるみに心奪われた五十嵐はその程度では引き下がらない。 大人しそうな見た目に反し意外にも強引な所があるのだ。 会計受付前で話し込むと他の客の邪魔になるのでレジの真横で店員と睨めっこをし始めた。 「もう一度どうぞ。いま売れないと仰いました?聴力には自信が有るんですけど。はて、どうも今日は聞こえが悪いみたいですねぇ。」 店員は笑みを崩さず先程放った言葉を一句違わず繰り返した。 「えぇ~っとですねぇ、こちら展示品なので商品じゃないんですよ~大変申し訳ないんですけどぉ。」 「俺思うんだけど、売り上げになるんだから倍の価格で売れば良いんじゃないの?」 「そうだ、良いぞ。フレディ君もう一押し。」 「でもぉ、こちらは非売品ですのでぇ。」 店員は見下ろしてくるフレデリックに微笑みかける。 要するに、売ることはできませんという意味だ。 日本人特有の曖昧で遠まわしな断り方だ。しかし日本人であればきっと相手の本音を嗅ぎ取り潔く諦めるはずだ。 それ以前に購入を目論んだ商品が展示用の非売品だと知った時点で、販売を拒絶する店員相手に値段交渉など始めないはずだ。 ――多分。

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