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第7話:【可愛いは正義とは本当なのか】脱げというならば脱ぎます。……この2人が

「知ってるけど?売ってよ。店は物を売るところ、店員は物を売る人だろ。」 フレデリックには、曖昧で遠まわしな言い方は効かない。 寧ろそうした言い回しを嫌う節があるので、時折必要以上に攻撃的になる。 兄崎は冷や冷やとした。 「非売品なのは百も承知。知った上で頼んでいるのです。」 きっと普段の彼ならば、一般的な日本人と同じ態度をとったはずだ。 五十嵐は可愛らしく笑い声を低くした。 「売ってください。というか、売れやこら。」 お前は何様だ。 兄崎は他人の振りをしたいと思った。 ショッピングセンターのど真ん中にある雑貨店の入り口で五十嵐と店員が同じ会話を何度も繰り返している。20分は経過した。 さらに、フレデリックも時折それに加わり、はたから見れば「一人の女性店員に執拗に絡むたちの悪い二人の男子学生」でしかない。 実に恥ずかしい。 半径2メートルは近寄らないでほしい。 兄崎は店員の困った顔を見ながら心の底から同情をした。 店員の笑顔は崩れない。対する五十嵐の表情も動かない。 大した物だと感嘆の息をつく。 何度も同じことを繰り返すクソガキ相手でも、女性店員は笑顔で拒否の言葉を繰り返すのだ。 「よろしい、ならば貴方の言い値で結構です」 「…少々お待ちくださいませ」 「――クックック、どんなに完璧なマニュアル店員でも世の中金。朝比奈君、君は正しい。」 「君はサラとどういう話をしてるんだよ。」 明らかに疲れを見せてきた女性店員は一度引っ込み、入れ替わりに年配の店員が五十嵐の前に姿を現した。手に余る客だと思いベテランを連れてきたのだろうか。 五十嵐は「これをください」と両手に持った展示品を差し出す。 「恐れ入りますがお客様こちら非売品でございまして商品としては販売いたしかねます。」 「わかりました。お金ならいくらでも出します。土下座しろというならば土下座もしましょう。脱げというならば脱ぎます。……この2人が」 五十嵐は、しれっとフレデリックと兄崎を指さす。 「俺らかよ!」 フレデリックは飽きたのか、大根に縫いぐるみを勝手に写メしている。 撮影禁止と書いているが、そんなもの気にする彼ではない。

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