10 / 62
第10話
「お前と二人で温泉かあ。神様がくれたご褒美だな。普段、行いがいいから」
「ビジネスホテルには、温泉はありませんよ」
「温泉のあるホテルとったから」と東城は言った。「ホテルというか、旅館だな。お前も今晩は、そっちに移動だ」
「でも、用件は今日中に終わるかと」
「大丈夫。今日は泊まりって決めてるから。用事が終わろうと終わるまいと」
なにが大丈夫なのかと思うが、そんなことを言った。そして、そっと広瀬の背に手をかけて押した。
「まずは、その件 の女性に会いに行こう」
そう言われたのでまずは丁重に頭を下げる。
「今回はお忙しいところご協力ありがとうございます」
「あ?ああ。そう、かしこまって言わなくても」
「きちんとお礼を言えと高田さんに言われました」
「そういうことか。他には何を言われたんだ?」
「東城さん、人の信頼につけこむようなところがあるから気を付けろ、と。高田さんと何かあったんですか?」
「陰で言われている悪口を実際に聞かされるって、面と向かって悪口言われるより気分悪いな。その件ではとっくに高田さんには怒られた。だから、もういいんだよ」と渋い顔をして東城は言った。
ともだちにシェアしよう!