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第14話
東城がとっていた宿は、駅からやや離れていた。周囲に雪が美しくつもった丘の行くと、御殿のような立派な建物が現れた。
タクシーを降りると、宿の係の人間が丁重に迎えてくれる。
通された先は、離れの建物だった。広い和室が二間続いている。
着物の仲居が二人にお茶をいれてくれる。多くは語らず、すぐに部屋をでていった。
「この離れは貸し切り」と東城は言った。
広瀬は、ぐるっとあたりをみまわす。
「いいところだろ。静かで。警視庁からきてて、最低限の業務以外では立ち入らないでくれって伝えてる。すごく、重要事件っぽいだろ。この後、人が来るのは、夕飯の時と、布団敷きに来るときくらいだ」
東城はネクタイを緩めお茶を飲んでいる。広瀬も座って、用意された和菓子を食べた。ほんのり甘くて柑橘系の風味がする。
「それで、早乙女との話は、どうでしたか?」
「せかすなよ。ゆっくりしようぜ」
「まだ、業務時間なので」
「そうだったか?」と東城が言い、腕時計を確かめるふりをする。広瀬が黙っていると肩をすくめた。「もう一回、来いって言われてる。明日の朝、また彼女に会う」
「ずいぶん長い話ですね」
東城はうなずいた。「大半は、本筋とは関係ない人間の悪口だった」
長い話になったのは、かなり話が脱線する人だったからだ。
女性と顔をあわせたとき、東城は2年半前のことを思い出した。当時、調書をとったときも相当時間がかかったのだ。
今回も、話は長いが、内容は多くはなかった。
「小松は、興信所を経営していた。彼女は、そこの共同経営者だった。もう一人共同経営者がいる」
「早乙女さんはただのスタッフじゃなかったんですか?」昔東城がとった調書の印象では、事務員という感じだった。
「彼女の話によると、そうじゃない。最初はアルバイトの事務仕事してたらしいんだが、途中で調査員の仕事も手伝うようになって、さらに、株ももらって、共同経営者になったらしい」
「同郷だからアルバイトを?」
「ああ。同じ高校出身だってさ。だけど、地元で面識があったわけじゃない。彼女が高校出て、専門学校を出たあと、2~3職を変えて転々としてたときに、知人に紹介されたんだとさ」
「小松は、つまりが、アルバイトの女性に手を出して、共同経営者にしたんでしょうか?」
「まあ、そうだろうな。小松は、女にだらしなかったそうだ。たいしてもてなかったらしいけど。言ってしまえば、手あたり次第だったそうだ」
「殺されたのは、男女間のもつれでしょうか」
「彼女はそうは言ってなかったな。もつれて殺すほどの魅力があるような男じゃなかったらしい。だから、殺されるとしたら、絶対に金がらみだって言ってた」
「興信所の金ですか」それほど儲かってそうはなかったが。「あの4人組の話と関係あるのでしょうか」
「早乙女瑠美子の話には、この辺の賭場の件はでなかった。彼女が言っていたのは、小松の妻のことだ。小松の妻は、彼に多額の保険をかけていたらしい。十分殺害動機にはなるな」
広瀬は、丁寧にメモをとった。
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