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第23話

小松が経営していた興信所は移転していた。電話番号の変わらない範囲にしたためだろう、前の事務所からそれほど離れた場所ではない。広いきれいなオフィスになっている。ガラス張りのドアで、受付は小ぎれいだ。 宮田はマスクをとって受付の受話器をとり、来訪を告げた。 明るいオフィスの中の仕切られた応接室に案内された。興信所の代表は浜口という名前だった。早乙女瑠璃子の話によれば小松と同い年ということだったが、写真の小松より若くみえた。血色がよく健康そうだからかもしれない。写真の小松は笑顔の時もどことなく疲れて老けて見えた。 「ここを引き継いで2年半になります。その間小松のことはずっと探していたんですよ。興信所なので人探しは得意ですから」と浜口は言った。 小松の死は既にニュースになっていた。 「小松さんの居場所の手がかりはあったのですか?」 「残念ながらありませんでした」そう言った後で、一瞬ためらいがあり、彼は口を開いた。「いずれ誰かから聞くと思うので言いますが、自分と小松は、最後の方がかなり険悪になっていたんです。だから、口もほとんど聞いていなかったのです。だから、手がかりをつかもうにも、ほとんどなかったです」 「険悪になられたのはどうしてですか?」 「この興信所の経営状態はかなり悪くなっていて、自分の給料は何か月も支払われていませんでした。自分は顧客から直接請求金額を回収して、経費精算をしてたんです。小松は横領だから訴えるといっていました。そのくせ、彼はほとんど事務所には来なくなっていて、何をしているのかもさっぱりでした。仕事をとってくるでもなく。だから、顔を合わせれば口論ばかりでした」 「そうですか」と宮田はうなずいた。「小松さんが行方不明になった後、この興信所を継いだんですよね」 「そうです。顧客もいたし、行方不明でもなんでも仕事は続けなければならなかったので。小松は確かに代表でしたが、自分や他にも株主がいたので、行方不明になった後しばらくして応急処置として臨時の株主総会を開いて、自分が代表になりました」 「今はかなり順調にビジネスされているようですね」 浜口はうなずいた。「普通にコツコツやっていれば、できるんですよ」 「小松さんを恨んでいた方はいますか?トラブルがあったといったことは?」 「仕事上でですか?」 「仕事でもプライベートでもどちらでもいいです」 浜口はまたためらった。「小松は、トラブルだらけだったので、何をお伝えしたらいいのかは分からないくらいですが」そう言いながら彼は席を立った。「少々お待ちください」 彼が奥に消えると宮田は広瀬にメモを見せてきた。

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