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第40話

「首輪をしていたんですか?」 「もちろんです」と父親が答える。「それで、どうして警察の方が、わざわざロビンのことを聞きに来られたのですか?」ロビンと言うのは犬の名前だ。そして、この家族が、小松のことなんかよりよほど聞きたい話なのだろう。 「小松さんのご遺体が見つかった場所から、犬の死体が見つかっていました。小松さんのお仕事に関係していた可能性があるので、ご連絡しました」 娘が息を吸い込んだ。顔色がいっきに白くなる。「死体って、ロビンの?」 「小型犬です。首輪はしていませんでした。黒い犬です。お腹と尻尾が白い」 家族は顔を見合わせた。母親が呟く。「ロビンだわ」 「その犬の死体の写真はありますか?」と父親が聞いた。 「ありますが、かなり傷んでいる写真です」 「見たらわかります。見せてください」と父親が言った。 宮田は娘に目をむける。「お嬢さんは、えっと、大丈夫でしょうか?」 「ロビンだったら、見たいです」と娘もいって、立ち上がり机に近づいた。 宮田は写真を取り出した。広瀬は、家族の反応をじっとみていた。 全員無言で写真を見ていた。それから、全員がうなずいた。娘の手がわずかに震えている。涙ぐんでいるのかもしれない。 「ロビンです」と父親はいった。「ひどいことを。誰がやったんですか?」 宮田はすぐに写真をしまった。 「9月20日に、小松さんに依頼をされたあとですが、小松さんはすぐにロビンを探すことを始めたのでしょうか?」 「そうだと思います」と母親は答える。 「ロビンは、小松さんの、その、死体と一緒に見つかったのではないのですか?」と娘が質問してきた。 宮田は聞かれた内容がわからないようだったので、広瀬が先に答えた。「2年前の9月25日に見つかりました」 「そんな前に、見つかってたんですか」と娘は言った。 「首輪も何もなかったので、飼い主の方にご連絡できなかったのです」と宮田が言う。「20日以降、小松さんとは連絡をしていなかったのですね」と彼はさらに念押しした。 「小松さんには、ロビンが行きそうな場所を伝えましたか?」と広瀬は聞いた。 「散歩コースは伝えました」と母親が答える。「室内犬なので、散歩コース以外の場所は知りません。ちょっと目を離した隙にドアから出て行ってしまっていて、戻れなくて迷子になったのは、散歩コース以外知らなかったせいかも、、」最後の方は後悔のせいか小さい声になった。 広瀬は、タブレットを取り出し、近所の地図を出した。散歩コースを教えてもらい入力していった。 家を去る前に、広瀬は、今の飼い犬の吠え声のことを聞いた。 「声帯の手術を、しています」と父親が答えた。そして、自分も声を低くする。「実は、隣の人が、犬の吠え声にうるさくて、吠えさせたら裁判するとか言われたのでやむを得ずです。それほど大きな声じゃないんですけどね」 「ロビンも、手術をしていましたか?」 「はい。ロビンの声がうるさいといって苦情を言われたんです」 広瀬と宮田が玄関を出ようとすると、犬がまたシャクシャクと声を出していた。

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