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第48話

小松の妻から話を聞いたのは、高田ともう一人のベテランの刑事だったが、広瀬と宮田も同席した。 小松の妻は緊張しているようだったが、高田が穏やかに「今日はご足労をおかけしてすみません」という出だしから始めたため、やや警戒を解いたようだった。 最初のうちは、高田は確認のため、と言って書類を見ながら小松の妻の証言をたどった。小松については、24日の朝姿を見たのが最後だったこと。26日に警察に届けたこと。小松は仕事がうまくいっておらず神経質になっていたこと。自分はその頃仕事で忙しく、十分に小松の話を聞いてやらなかったことなど、今まで聞いてきたことを同じように話した。 高田とベテラン刑事は彼女に同意しながらも、切り込んだ。 「小松さんは、毎朝、興信所に行っていたのでしょうか?」 小松の妻は、質問の意味を把握しようとしたのか、返事まで間があった。 「そうです。毎朝、仕事に行っていました」 「奥さんは、朝、出勤する小松さんを見送られていたのですか?」 「え、ええ。でも、毎日ではありません。私の方が仕事が忙しくて、早く出る日もありましたから」 「24日は、朝、見送られた?」 「はい。そうです。ほとんど一緒に家を出ました」 高田は、うなずいた。 「ところで、小松さんが亡くなったのは、24日ではなく、20日だったのではないかと我々は考えています」 小松の妻の目が驚愕で大きく開いた。「何を、おっしゃっているんですか?24日の朝は、私、」言葉が詰まる。 「おそらく、あなたが小松さんに最後に会ったのも、20日なのではないですか?」 高田は、手元の資料を小松の妻に見せた。小松の行動履歴だ。 「小松さんは、以前は毎朝自分の事務所に行って、規則正しく働いていました。だが、亡くなる前の1年くらいは、不規則で事務所に行かない日も多かったそうです。浜口さんや早乙女さんもそう証言しています。家の近所の方もそういっています。あなたは、そのことをご存知なかったのではありませんか?」 それから、高田は、犬の写真を小松の妻に見せた。 「この犬は、小松さんと一緒に殺されています。鑑定した獣医によると、犬は、20日に死んだと考えられています」獣医師は20日と断定したわけではないが、取り調べにははったりをきかせるのも大事なのだ。 彼女は、長い睫毛にふちどられた大きな目で犬の死体の写真を凝視していた。

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