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第51話

「用件があるなら、今、言ってください」と島村が言った。 「小松さんの奥さんが、小松さんを殺したのは、あなただと証言しています」とチームのリーダが言った。 島村はわざとらしく苦笑してみせた。「なんですか、それは?急に何を言い出すんですか?」 「島村さん、あなたは、小松に脅迫されていましたね。会社の金を使い込んだ件でです。それで、小松から金をゆすられていた。かなりの金額を支払っていたはずです」 島村は首を横に振る。「何の証拠があってそんなことを?」 遠くからヘリの羽の音が聞こえてきた。黒い影がこちらのビルに向かってやってくる。島村はその機体をじっとみていた。 「島村さん、証拠についても小松さんの奥さんが証言しています。殺害につかわれた凶器を彼女は隠しています」 「まさか」と島村は言った。 ヘリの音で声が聞こえなくなった。風が強く押し寄せてくる。屋上には、島村の秘書の男も現れる。「社長!」心配そうに彼は島村を大声で呼んだ。 「アポイントはどうされますか?」 ヘリコプターがゆっくりとヘリポートに降りてきた。島村は一歩前に踏み出した。 チームのリーダーが声をかける。「島村さん、このまま行かれてもよい結果にはなりませんよ」 「それは、どうかな?」と島村は言った。「重要な仕事があるんでね。令状をとってきてください」 リーダーは首を横に振った。「時間がかかるので、ここで待っていていただけますか?」 「まさか。何のためにヘリを呼んだと思っているんだね。急いで四国に行きたいからだ」 島村はまた一歩歩き出した。ヘリに乗り込もうとしている。 「なんだったら、ついてくるかね?」と彼はふてぶてしく言った。「逃げようとしているわけじゃないんだ。仕事で急いでいるだけだからね。明日には、また、ここにもどってくる」 秘書の男もヘリに乗ろうとしている。 「止めた方が得策ですよ」とリーダーは秘書に言った。秘書は黙っている。判断できないようだ。 島村は、ヘリに乗り込んだ。 「あ、」 宮田が気が付いた時には、広瀬が動いていた。彼は、ヘリの扉に手をかけたのだ。 「何をするんだ」島村が広瀬を押し出そうとし、大声で怒鳴った。 広瀬は、何か答えているが、騒音がひどく聞き取れなかった。彼は、扉に手をかけ、半身をヘリに入れて島村とやりとりをしていた。 下手すると無理やり島村をひきずりだしそうだった。 「広瀬、ちょっと」と宮田がどうしようか迷っていたが、リーダーは広瀬を止めようとはしていなかった。むしろ、彼もヘリに近づき、広瀬に並んで何かを言った。 ヘリのパイロットは、島村と警察のやりとりが続くため、とまどっているようだった。しばらくした後、ヘリは、エンジンを止めた。島村はヘリを降りようとはしなかったが、パイロットは飛び立つことはしなかった。 その後、任意で大井戸署に来た島村は、すぐに自分の弁護士を呼んだ。弁護士は、強引な取り調べだとして、抗議をしてきた。 だが、小松の妻が隠していた凶器から島村の指紋がみつかった。

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