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第52話

結局、広瀬が東城のマンションに帰って落ち着いた夕食がとれるようになるまで一週間以上かかった。 証拠品や証言を整理したり書類を作っていくのにかなりの時間がかかったからだ。 忙しい間も、寝て起きるだけのために広瀬は東城のマンションに行っていた。 前は、自分のアパートに帰っていたのだが、東城のマンションに帰る方が習慣化していて、ぼんやり帰宅するとそこにいるという感じの毎日だった。 久しぶりにゆっくりと風呂にはいり、湯船に身体をしずめていると浴室のドアが開いた。湯気のむこうに東城が顔を見せる。 「おかえり。今日は早かったんだな。一段落したのか?」 広瀬は無言で首を横に振った。 「まだまだか。でも、この時間にいるってことは峠はこえたんだろ。飯、用意してやるから、ゆっくりしてろ。あ、そこでは寝るなよ。溺れるからな」 そう言い残して、ドアが閉まった。

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