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第53話

風呂から出てダイニングにいくと、東城がワイシャツを腕まくりして、皿を運んでいる。手伝おうとしたら、今日はいいから座ってろといわれた。 見ていたらかいがいしく夕食の準備をしている。 前は家事なんてほとんどしなかった東城からしたら、レンジで温めて並べるだけでもかなりな進歩だ。広瀬は今電子レンジ見ることさえしたくないので、黙って、彼が支度をするのを眺めていた。 目の前に大きなどんぶり鉢いっぱいの水餃子が置かれる。 机の中央にはエビチリ、チンジャオロース、棒棒鶏、春巻き、蒸した白身魚のあんかけ、スープなどが並んだ。料理だけみると、まるで、ぐるぐると手で回せる丸い台が机の上に乗っている中華料理店のようだ。 「石田さんにこの前会ったんだ。中華が食べたいって言ったらいっぱい作ってくれた。だから、当分、中華料理だから」 「ご飯は?」 「米食べたい?石田さんが、水餃子がご飯替わりだっていうんだ。でも、米もある。欲しいか?」 「いえ、いいです」そう言えばどこかで聞いたことがある。水餃子は皮が厚く、ご飯のように食べるらしいのだ。 東城が作ってくれた水割りは、やや薄目だった。 「お疲れさま」と彼は言った。「逮捕状でたんだってな。島村が犯人で決まり?」 「本人も認めました。凶器のハンマーからも指紋がでました。でも、島村と小松の妻とその愛人とでは話が食い違っています」 そう説明しながら広瀬は水餃子を口に入れた。皮から手作りなのだろう。もちもちだ。確かにご飯はいらないかもしれない。 水餃子を二つほど食べ終えると、エビチリを食べる。口を動かしながら野菜の炒めものも手元に引き寄せておいた。急におなかがすいてきたような気がするのだ。 「どんなふうに違うんだ?」と東城が関心を強くしている。 「小松の妻は、自分が帰ったら小松が死んでいて、凶器のハンマーが落ちていたと言っています。小松が殺されるとは思わなかったと言っています。島村は、殺すつもりはなかったと言っています。小松の脅迫をやめさせようとハンマーを持っていっただけだそうです。もみ合いになってうっかりハンマーが当たって倒してしまったということです。その時は死んでいなかったから、後から小松の妻がとどめをさしたんじゃないかと主張しています」 「そうなのか?」 「見つかった白骨からは、複数回の殴打が見られます」 「じゃあ、島村の言ってることは本当なのか?」 「島村が何度も殴った可能性もあります。白骨化した今となっては、遺体からは詳しい状況はわかりません」

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