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インフルエンザ 2

広瀬は冷蔵庫を開け、次いで冷凍庫を開け、中を見た。中には中華の残り、トルコ料理、メキシコ料理が入っている。どれも石田さんが腕を振るってくれた美味しいものだが、病人向けにはややオイリーだったりスパイシーだったりする。 お粥にするか、と広瀬は思った。卵はあるから簡単な卵粥はできそうだ。慎重を期すため、ネットでレシピを調べた。 食事の準備ができたので寝室に入ると東城は布団に埋もれて目を閉じていた。風邪で辛いのは本当なのだろう。さっきよりぐったりしている感じもする。 顔をよせ、額に唇を当て軽くキスをした。熱はあるが、やっぱりそれほど高くない。 彼が目を開けた。 「できましたよ」 もぞもぞと身体を動かし、起き上がる。そして、広瀬を見上げる。 「どこに?」 「え?」 「晩飯」 「えーっと、ダイニングですけど」 「ここで、食べさせてくれるんじゃないのか?」 「あー」と広瀬は答えた。「なるほど」 変わった人だなあと思いながら広瀬はお盆にお粥とぬるく入れたほうじ茶をのせ、寝室に戻った。 「食べさせてくれるんだよな」と広瀬が何か言う前に、東城が言った。弱っているような風情ではあるが、演技かもしれない。 広瀬は返事をせず、お粥を匙ですくい、息をかけて冷ました。 「はい」 差し出すと口に入れた。ゆっくり食べている。 「うまい。何が入ってるんだ」 「卵とネギです」 「それだけ?」 「はい」 東城は心から感心しているようで、たいして手間もかけていない卵粥を絶賛している。これは演技ではないようだ。 お椀の中身は時間をかけて食べられた。 「お代わり食べますか?」 「いや、もういい。美味しかった。ありがとう」 東城はそう言った。 「ゆっくり寝て、早くよくなってください」 「ああ。今日は、お前、和室で寝ろよ。お前にまでインフルエンザがうつって二人で倒れたら、目も当てられないから」 「そうですね」 東城さんは、インフルエンザじゃありません、とは面倒なのでもう言わなかった。風邪でもインフルエンザでもなんでもいいから、早く治って欲しいものだ。

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