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インフルエンザ 3

翌日、和室で寝ていた広瀬は、廊下やリビングで人が動き回る気配に目を覚ました。 時計は朝の5時だ。どうしたんだろうか、まさか、苦しくなって必死に出てきたとか。そう心配になって、起き上がり、素足で急いでリビングに行った。 すると、東城が立っていた。 「起こした?」と彼は言った。 「どうしたんですか?」 「朝起きたら、熱が引いてた」彼はランニングウエアに着替えている。 「まさか、走りに行くんですか?」 東城はうなずいた。「休むと身体がなまるんだ。短時間でも毎日動かすと体調がいい」 「東城さん、」 「なんだ?」 「昨日の夜、インフルエンザだったんじゃないんですか」 「頭ごなしに否定してたくせに」 「そうですけど、元気なんですか?」 東城は、笑顔になった。 「本調子じゃないけど、元気だ。お前の愛情のこもった卵粥のおかげだ。医者の処方薬なんかよりよっぽど効く」とまたもや医者の息子とは思えないことを言った。 彼は、つっ立っている広瀬を抱きしめた。体調はほぼ戻っているようだ。 「ありがとう」と彼は言い、広瀬の額に軽くキスをした。

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