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大丈夫だと言った手前、あまりこんなことは思いたくなかったが、やはり。
一時間半は長すぎた。
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最初は本屋の中を一周した。
雑誌の棚、小説の棚、漫画の棚、それから授業で使うような専門書の棚を見て回り、興味もないのにガーデニング関連の本も開いてみたし、飼っていないのにペットの本も探すふりをした。
それでもまだ時間はある。
仕方がないので再び雑誌コーナーに戻り、他の客に交ざって立ち読みをした。
流し読みで一冊を終え、二冊目を手に取ろうとしてさすがに罪悪感が湧いてきた。
自分の他にも長時間の立ち読みをしている客もいるのだが、何となく、だ。
雑誌を探す手を止めて店を後にし、携帯電話で時刻を確認すると、まだ五時四十五分だった。
――六時までにはこっち出られるとして、車で飛ばしても三十分はかかるけど。
坂城はそう言っていた。ということは、彼がここに到着するのは六時半頃。
……長い。
坂城に早く会いたい一心ですぐさま勇大と別れてしまったが、失敗だった。
放課後ふたりで遊んでも、だいたい六時過ぎには別れることになるのだから、いつも通り過ごせばよかったのに。
小さく溜め息を吐いて、颯馬は車道の傍まで足を進めた。
出てきたばかりの本屋の方へ身体を向け、ガードレールに寄りかかる。
そろそろ仕事は終わっただろうか。もう車に乗って出発しただろうか。もうすぐ着くから、などという連絡とか……。
そこまで考えて、颯馬ははっとした。
ちょっと待った。
慌てて携帯電話の電話帳を開く。
やはりそうだ。バカだ、俺。
坂城と会う約束はしたのに、連絡先を交換していない。
これではどちらからも連絡をとることはできないではないか。
たとえば、道路が渋滞していて少し遅れるとか、急用が入ったから行けなくなったとか。
颯馬が待ち合わせ場所を間違えていた時などにも、坂城からの連絡は颯馬に来ないし、自分からもできない。
「……」
はあ、と深く溜め息を吐いた。
もし時間通りに坂城が来なかったら、颯馬はどうするのだろう。
少し待つのか。それともずっと待つのか。そもそもずっととはいつまでだろう。
考えれば考える程わからなくなる。
ふるふると首を振って、颯馬は顔を上げた。
来るよ、きっと。
あの約束は冗談などではないと思うし、からかわれたわけでもない。
待つしかないし、待っていたい。信じている。
不安をすべて拭い去ることはできないけれど、待とう。
携帯電話をポケットに戻し、鞄から音楽プレイヤーを取り出した。
ヘッドホンをつけて、再生ボタンを押す。
夕暮れ時。急ぎ足で目の前を通り過ぎていく人の流れを眺めながら、颯馬はぼんやりと時間を潰した。
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