43 / 62
12-2
暗闇の中で互いに服を脱ぎ捨てて抱き合う。何度もキスを繰り返し、互いの身体に手のひらを這わせる。
颯馬の鎖骨に唇を押し当て、それから首筋を舐め上げてきた坂城の息が耳に吹きかかる。熱くて、くすぐったくて、颯馬は肩を竦めて小さく笑った。
耳にもキスをされる。いつの間にか坂城の手が胸を撫でている。坂城の膝が颯馬の両足を割り、もう片方の手が足の上を這っていく。
全身を触れられて、吐息と共に声が零れ落ちた。鼻から抜けるような甘えた声。恥ずかしいと思っていたはずなのに、今日は自分の声にも欲情が煽られる。
不意に、乳首を口に含まれた。舌先で転がされ、ちゅ、と音を立てて吸い上げられる。
びくりと身体を震わせて、颯馬は再び甘く声を零した。
初めて触れられた時はくすぐったいだけだったのに、こうして何度も坂城に弄られていくたびに感覚は変わっていった。くすぐったいという感覚がいつの間にかむず痒く感じるようになり、そして今は、気持ちいい。
反対側にも坂城の指が触れた。優しく捏ね回され、押し潰され、弾かれる。もっと、とはしたなく胸を突き出してしまいそうになり、颯馬はベッドへ背中を押しつけた。
子供のように両腕を伸ばすと、坂城がキスをくれる。何度も、何度も、そうやって愛撫の途中で颯馬はキスを欲する。
そのすべてに応えてくれる坂城と颯馬の荒い息遣いが部屋に響き渡る。熱く湿った空気と、シーツが擦れる音。坂城が動くと、ぎし、とベッドが軋む。
胸ばかりを弄る坂城が不意に上体を起こした。腕を引かれて颯馬も身体を起こす。
ヘッドボードに寄りかかって座る坂城の両足を跨いで、颯馬は膝立ちにさせられる。その間に潤滑剤を手に垂らしていた坂城が、颯馬の腰を引き寄せて足の間へ指を触れさせてきた。
ぬるりと、ほんの少し冷たい感覚が臀部の奥に走る。
先生、と呼んで抱きつくと同時に、指が身体の中へ入ってきた。ゆっくりと内壁を掻き分けて奥へ進んでくる。教わった通りに深く息を吐き出した。
初めて坂城の指が身体の中へ入ってきた時は、あまりの痛さに涙が勝手に溢れてしまった。痛さを我慢しているうちに気分が悪くなり、行為自体を中断した。本来受け入れる役目ではないその場所へ外から異物が入ってくるのは、颯馬が想像していた以上に痛く、違和感のあるものだった。たとえそれが小指程の太さだとしても。
けれど、何度となく受け入れていくうちにその感覚にも慣れてきた。慣れるだけではない、快感を覚えるようにもなってきた。身体の中で蠢く坂城の優しい指の動き。抜き差しされる時に感じる滑りと、指の関節が引っかかるような感覚。初めの頃の違和感はいつしか甘い疼きとして身体が感じるようになった。
今も同じようにして坂城が颯馬の身体を解していく。ぐるりと中を掻き回して、一度引き抜き、指をもう一本増やして再び中へ。
人差し指と中指、この二本を受け入れることは、完全にはまだできていない。この前した時は二本目の途中で痛くなって音を上げてしまった。
けれど今日は痛いとは言わない。絶対に。
坂城を欲する気持ちが止まらないから。
「……っ」
徐々に奥へ進んでくる指の感覚に息を詰める。抱きついた坂城の肩に爪を立ててしまい、颯馬は慌てて手を離した。
「しがみついてていいから、身体の力抜いて」
背中を撫でられて息を吐いた。頷いてから言われた通りにする。果たして本当に力を抜くことができているのかどうかはわからないけれど。
「慣れるまでしばらくこのままにしとくから」
指の動きを止め、坂城が颯馬の胸にキスをする。その唇が移動し、乳首を吸い上げる。思わず背を仰け反らせると、身体の中で坂城の指が腹の内側に当たり、その感覚に身体がさらにびくりと揺れた。
「――っ、ぁ、あ」
颯馬の反応に坂城が口を離して顔を上げる。肩を震わせている颯馬を見て、満足そうに目を細める。
「ここ、この前した時にも触ったよな」
「……で、も、……あの時は、前も、さわ、ってた……」
「こっちだけでも感じるだろ」
坂城の指が再び腹の内側を押す。腰が砕けてしまいそうな程の疼きが生まれ、颯馬は再び声を上げた。
強引なことも、颯馬の嫌がることもしないのに、こういう時の坂城はほんの少し意地悪だ。力を抜けと言ったくせに、坂城の指を締めつけるようなことばかりをしてくる。そうするとさらに気持ちいい場所に指が当たり、腰が揺れてしまう。それを繰り返しているうちに、今日はまだ一度も触れられていないところが痛い程はちきれそうになる。
熱く膨れた性器の先から溢れたものが、糸を引いて坂城の下腹へ落ちた。どうしても我慢できなくなり、颯馬は右手をそれへと伸ばしていく。けれど。
「自分で弄るのはナシ」
坂城に止められた。
ともだちにシェアしよう!