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「ん、ぁ、……っ、や、あ、……あっ」  指を曲げて颯馬が一番感じる場所を押し上げる。膝が崩れそうになった颯馬を支え、さらに奥へと指を進ませた。  素直に反応する颯馬の首に思わず噛みつきたくなり、坂城は胸の中で舌打ちをする。指を増やして激しく抜き差しすると颯馬の声が一際高く上がる。それが耳に届いた途端、鼓動が大きく高鳴った。  気付いた時には颯馬の片足を浴槽の縁に立たせ、露にしたその場所に自身を押しつけていた。 「……っ、颯馬」  いつの間にか坂城の息も上がっている。颯馬の腰をぐっと引き寄せて深く繋がった。 「ぅ、あ、……あぁッ」  一息で貫かれた颯馬が逃げようと壁に縋りつく。すかさず律動を始めると、途切れ途切れに待ってという言葉が聞こえてくるが、熱く絡みついてくる颯馬の中がかろうじて残っていた坂城の理性を奪い去る。  本能の赴くままに腰を打ちつけて、颯馬から溢れる甘い声に酔いしれる。  坂城だけのものになりたいという颯馬の言葉を思い出すと、今日はこのまま互いが壊れるまで抱き続けたくなった。  それもいいか。  もう何も気にする必要はない。  もう何にも、怯える必要もない。  爪を立てる颯馬の手に自分の手を重ねて、坂城は耳元へ口を寄せる。 「……颯馬」 「ん、……ぁ」 「颯馬」 「な、に?」 「――……愛してる」 「……っ」  坂城が囁くと、颯馬がぴたりと動きを止めた。息を呑んだ颯馬が顔を俯け、やがて肩が小刻みに震え始める。  すん、と鼻を啜った颯馬が拳で小さく壁を打った。 「……せんせ」 「ん?」 「そっち、向きたい」 「……どうして?」 「向かい、合いたい。ぎゅってしたい、ぎゅって、してもらいたい、……っ」  言い終えないうちから本格的に颯馬が泣きだしてしまった。ここまで泣かせるつもりはなかったんだけどな、と苦笑しながら颯馬の髪を撫で、一度自身を引き抜いた。  向かい合った颯馬の片足を持ち上げ、再び繋がる。坂城に抱きついてきた颯馬が嗚咽を零しながら、満足そうに小さく笑った。 「……泣くか笑うか、どっちかにしない?」  颯馬の求めるまま坂城も抱きしめる。 「そんな器用なこと俺にはできないよ。先生を好きでいることしか、俺にはできない」  先生、と今度は颯馬が囁いてくる。 「ん?」 「……俺も、……愛してる」  颯馬がさらに強く抱きついてくる。その背中をそっと撫で下ろし、坂城は眉を寄せて笑った。 「……知ってるよ」  ――そんなことは知っていたよ。  坂城にとって、颯馬は自分の人生を変えてしまう程の甘美な毒だということも。  すべて最初からわかっていた。

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