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「騎士長を唆すとは、やりますねぇ、サタナエル殿」 「その名はもう剥奪されましたよ。今のこの男は名無しの罪人です」 「おっと、これは失礼」  鉄の臭いと熱気が籠る中、罪人が着せられる薄布の服を着て鉄枷で手足を拘束され、筵に座らされた俺の頭上で、はははと2人の兵が笑う。  ――ここは国を追放される罪人が烙印を押される場所。 「さてさて、どこに押しましょうか。鶏姦と云えば、やはり『あれ』ですかね」 「エグイなお前。せめてケツにしとけよ」 「男色家としてはぁ、どちらがイイんですかぁ?」 「変な声出して腰振るな。ウケるからやめれ」  そして又笑う、下品な声が耳障りだ。目隠しをされていて見えないが、等しく品の無い顔をしているのだろう。フンと鼻を鳴らす。 「下劣な。陰部でも尻でもやるならさっさとやれ」  俺も騎士の端くれだ。皇帝に云い渡されたときは頭が真っ白になり、取り乱してしまったが、騎士たる者毅然と潔くあれ。ですよね? ミハさま。  これ程に似合う人は居ないでしょう、その誇り高き精神を纏う様に純白の軍服に身を包み、何千もの騎士の前に立つ彼が浮かぶ。昨日まで見ていた筈なのに、もう懐かしいと思うその御姿に口元を綻ばせた。  ミハさま、嗚呼ミハさま。  きっと何かお考えがあるに違いない。  ならばこのサタナエル、貴男への愛と忠誠を誓って罪の烙印を押されましょう。  刹那、頬に衝撃を受けて倒れる。歯が当たって切れたらしい。口の中に血の味が広がる。 「さーせん。足が当たっちゃいました」 「なにしてんの、お前」 「ドヤァって感じだったんで。どうせ罪人だし、蹴っても問題ありませんよ」 「そうだな。じゃあ」  鳩尾を蹴られて躰が仰向けに転がった。咳き込んでいると、脚を割って入ってきたものが胯座を押さえ、滑り上がる。 「なにしてんですか、あーた」 「罪人だから問題ナッシング」  ヒヒッと笑って上へ下へ動かす。靴だろうか。擦れる底の凹凸が魔羅の裏を刺激して全身を粟立たせる。 「や、めろ」 「ん? ここがイイって?」  括れを突かれ、思わず腰が跳ね上がった。 「まじすか」  傍観者の笑う声が羞恥を煽る。歯を噛み締め、靴の先が抉る様に食い込む屈辱に耐えれば、それを彼らは更に嘲笑した。  愛する人に抱かれた躰が踏み躙られていく――汚される前に、いっそ、噛み切ってしまおう。口を開き、舌を出す。 「おっと」  革の帯を噛まされ、呻いた。 「自害は国を出てからにしてください。ここで死なれたら僕らの責任になってしまいます」 「ひでぇ」  云いながら声は笑っている。 「あーたも、ヤるなら早くヤりなさいよ。靴コキで悦ぶ男色家の相手してやるほど暇じゃないんですから」  帯を手際良く二重に巻いて後頭部で締め上げ、腕を掴み上げると、俺の躰を引っ繰り返して俯せにする。そしてズボンを膝まで下ろした。  本来なら罪人は衣服を纏うことも分不相応であるが、皇帝の慈悲により着るものを与える。しかし下着は贅沢だ、と云うのがこの国の考えだ。騎士と云えど俺も例に漏れず、下着を穿くことは許されていない。当然尻が丸見えになる。 「情緒がない」  カチャカチャと金具が鳴る。 「と、云いながら靴コキで悦ぶ男色家がここにも」 「うっせ。悶える美人見てっと必然的にこうなんだよ」  尻を開かれ、菊門が外気に触れた。何をするつもりなのかは安易に予想出来る。猿轡の所為で言葉が発せず、俺は呻き声を上げた。両手を繋ぐ鎖が金属音を響かせる。 「早く入れてやりなさいよ。欲しがってる」 「お、おう」  魔羅の頭頂が菊門に付いては離れ、ノックを繰り返した。躊躇っているのか。そうだ、やめろ。呻きながら心中で叫ぶ。ミハさまが染み付いたこの躰を汚すことは赦さない! 「はよっ!」 「おうおおっ?」  体重が伸し掛り、粘膜を引き破られる様な痛みに息を詰まらせる。何が起こったのか解らなかった。頭は真っ白になり、躰はガクガク震える。 「てめっ、蹴るんじゃねぇ!」  男が俺の背中に手を突いて上体を起こすと、今度は腸が引き摺り出されそうになり、呻いた。入っている。状況を把握した瞬間、酷い絶望感が襲う。 「さーせん。足が当たっちゃいました。てへゲロ」 「ぐぅ……きつ……」  荒い息を吐きながら、時折おうおうと声を上げて腰を引き、菊門に魔羅を挿す。放心した俺は痛みも快感も感じなかった。 「持っててください」  掴み上げられた髪が手から手に渡り、猿轡が外される。溜まっていた涎が一気に流れる口に、鉄のものを入れられた。それは腐食しているようで、ザリザリした表面が歯に擦れて錆を落とす。 「なにすんの?」 「仕事に決まってるじゃないですか。サボって鶏姦に耽る先輩に代わってね」鉄に摘ままれた舌が引っ張り出され、近付く熱源。「烙印を押すんですよ、っと」  口の中で弾ける衝撃で頭が破裂しそうだった。高温の鉄に焼かれ、声にならない叫びを上げる。躰が痙攣し、魔羅から小水なのか精液なのか判然としないものが迸り、眼球が上を向く。 「ヤベっ。う、おぉお!」  薄れていく意識は、男の咆哮とともに放たれるものに体内を汚された直後、真っ暗な闇に落ちた。

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