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第14話(幼馴染)
徐々に近づく二人に、俺もだんだんと冴え渡る思考回路で、どう陽の心に踏み込もうかと思案を巡らせる。
他人の玄関前であぐらをかいて誰かを待っている姿は、誰でも驚くだろう。
もしくは新たな取り立てでも思うのだろうか。
二人は階段を上がりきるまで俺の存在に気づかなかった。
「え、秀くん?」
「よぉ、陽」
「こちらは?」
「えっと・・・・・・」
陽が俺との関係を説明するのに言葉をつまらせている。
気に食わない。
「俺はこいつとは幼馴染で、腐れ縁といったところですよ」
「・・・・・・」
「へぇ、陽さんとはタイプの違うご友人なんですね」
この女は故意で俺に対して陽とは「合いそうにない」と言っているのか。
大人の女を醸し出すそいつにも気に食わない。
「俺はちょいとこいつに用があってこっちに戻ってきたんですけど、なんせ昨日からいないみたいで、ちょっと俺急いでるんですけど、もしかして、お楽しみのお帰りだったらすみませんね」
「あー!――」
「秀くん、場所変えよう。ルミさん、すみません、また今度連絡しますので今日のところは」
「分かってるわよ、また後日、連絡するわ」
なんだよ、ルミさんというやつの言葉も聞かせたくないほど、情が移っちまったのか。
カモフラージュとかなんだろう、とか密かに高をくくってた俺が愚弄だったというわけだ。
女も女で、すんなりと引き下がってくるあたり、そうとう自信があると見える。
腹立たしい。
陽もその女が振り返って帰り出すまで、一切焦りというものを見せず、心のゆとりを装っている。
昨日の今日で疲労が取れるほどの仕事量じゃなかったはずだ。
俺の家を出てすぐまた朝帰りだ、きっと疲れている。
彼女が見えなくなったとき、俺の視界の隅で何かが動いた。
「秀くん」
「おわっ!」
倒れ込んだ陽は俺の腕に抱かれても、焦り一つしない。
それどころか、俺の範疇を超えた反応を見せた。
「秀くん、来た」
「おう、俺は怒ってここに来た」
「怒ったの」
「そう、怒ってここに来たら、女と朝帰り」
「あ――!」
身体、冷えてる、陽は俺を腕だけで抱きしめ温めようとしてくれている。
俺は少し混乱した。
呆れて家に帰ったのではなかったのか、俺の予想は間違っていたのか。
「ゴメンね、ゴメン、だけど嬉しい」
拍子抜けしている俺がどう接していいのかわからなくなったが、今陽は疲労が半端ないほど溜まっているのになにやらニヤケ顔だ、というよりしたり顔に近いのが怪訝だ。
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