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第12話 ノリオ

ユウトがあれ以来部屋に籠っている それほどひどいことを言われたに違いない ポストには心配するような手紙やら学校のお知らせが入っている こんなに心配してくれる人がたくさんいるというのにユウトを傷つけるやつがいるとは 私は一枚ずつじっくりと読んだ 『ユウト君、あの子達はもうあんなこと言わないって言ってたからもう大丈夫だよ 午前中だけでも来ない?』 『いきなり教室に来るのは抵抗があるのかな、なら別室で勉強するのはどう? 来てくれたら先生うれしいな、それにお兄さんも…』 『ユウト君明日は自習時間が多いからちょっとでも来てみない、友達も心配してるよ それと明日は参観日だからお兄さんもどうでしょうか?ご家族のかたに生徒さんの勉強風景を見ていただく日になってます』 こんなにも考えてくれている先生がいるとは 気づくと手紙をもって部屋の前に立っていた 「ユウト、こんなに先生から手紙が来てるぞ ほら読んでみないか、なんなら私が読んでやるぞ 全然出てこないだろう、ほらお腹すいてないか何が食べたい?」 返事がない、こんなんで兄になんてなれるのだろうか 私にさえ心を閉ざしている もしかするとお腹が空きすぎて倒れているんじゃ 嫌な考えばかりが浮かんでくる、私は手紙を箱にいれてタンスにしまった 箱にユウトへと慣れないハートマークも描いて いつかユウトが読んで喜んでくれるように 私は台所に向かった さすがにカップラーメンを戸の前に置くわけにはいかない、 かといって私のできる料理は 魚を買って焼いてみた 臭いで気付かれないようにあまり臭いのしない魚を選んだ 待てよ焼く前から真っ黒だから焼けたかどうか 気にせずに戸の前に置いた 愛のメッセージも添えておいた きっと喜ぶだろうなぁ ソファで布団をかぶって寝たふりをしてみた 戸の開く音がした 嬉しくて今すぐ飛び起きたかったがグッと耐えた 何かを食べる音がした、あれを食べてくれたのか 戸が閉まるのを確認してからレシートを見てみた… さけとば いや良いんだ焼いた方がさけとばはうまい ユウトがお兄ちゃんと呼んでくれるまでもう少しか もし呼んでくれるなら『クソ兄貴』でも構わない ソファに横たわり扉に向かって「おやすみ」とだけいって目を閉じた
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