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第13話 ユウト

朝が来てしまった それにしても変な魚だった きっとあいつの嫌がらせだ、やっぱりあいつは 俺は制服を着て地獄に向かった あいつはまだ寝ている、他人の家でよく寝ていられるな まな板の上にさけとばの袋がある…これを焼いたのか まだ残っていたさけとばを醤油ラーメンに千切りながら入れてお湯をかけた 蓋だけして外に出る 今日は参観日だ… 足が重い、ちょっとの距離なのにまるで重りを足首に付けられた囚人気分だ そうだ今から地獄に行くのだから仕方ない 周りの目線が突き刺さる 何を言いたいかは分かる…俺はようやく重い足を校門まで持ってくることができた 先生が立っていた まるで俺を待っていたかのように目を輝かせて 手まで合わせて 「良かった!間に合ったね…ほらユウト君もうすぐお昼だから教室で食べる?」 もうすぐ昼 俺は朝ではないのかと聞いてみた 先生の表情が明るくなる、間違ったことでも言ったか 「そっか寝ちゃってたんだもんね、大丈夫もうお昼はあるから」 まるで見てきたような言い方に気にはなったが ここまで来たなら最後まで 俺は扉を押さえている先生に頭を下げながら入っていった 下駄箱は意外なほど綺麗だった 教室の横の自習室に連れてかれて弁当箱を渡された 中には冷凍だとすぐ分かるような物ばかり やっぱりさけとばが入っていた 先生はずっと俺の横にいる 物珍しそうに食べてる俺を見て、食べ終わると拍手までしてきた バカにしていると思っているのに少し心地よかった 「もうすぐ授業が始まるから教室に行ってみる?」 俺は戸を開けた、視線がいたい どんなことを言っていたのか、どんなことを言われるのか 机は綺麗だった…あいつらはなにも言わない むしろ怯えているのか震えている 俺が怖いのか、だろうな 椅子に座りうつ向く、誰も寄り付けないオーラを出してみる 足音が聞こえる、あいつらだ バカにするにきまってる…俺は何を言われても良いように顔を伏せたままじっと耐える 「悪かったよあいつお前の兄貴だったんだな なにも知らないでひどいこと言ってごめん」 謝ってる俺にあいつらが…顔をあげるとあいつらが顔を伏せていた 「席にもどれよ」 俺は出来るだけ優しい声で言ってやった 周りから拍手が起こった 「さぁ仲直りしたところで親御さんが来るまで時間があるから普通に授業しますよ」 時間がたつにつれ誰かの母親だの父親だのが入ってきた なかなかあいつが来ない チャイムが俺を包むようになった 他のやつらは家族と一緒に帰っていく 校門で随分と待ってみた あいつが遠くから走ってきている 時々立ち止まって息を整えている 笑顔の練習もしている だが近付く目の中にはなぜか涙があった 「悪かった、ごめんなユウト…ハァ……ハァ……実は……」 あいつが来てくれた… なんでうれしいんだ 複雑な気持ちのまま俺は車に乗った… あいつの母が倒れたそうだ

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