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第9話 ユウト
あんなことが起きてからノリオが優しくなった…もともと暑苦しいほど俺に付きっきりだったが…
今朝は焦げ臭さで起こしに来た…
あいつが台所であたふたしている…
「申し訳ない…お腹すいたと思って…冷蔵庫見たら全然ないから私が作ってやろうと…」
「焼き魚は苦手だ……」
俺は事実を言っただけなのにあいつは目を輝かせていた…急いで黒いやつを捨てて冷蔵庫を漁っている
「そうか…苦手だったか、たしかにないなぁ魚…じゃあユウトはなにが好きなんだ…ご飯か…麺類か…辛いものとか…」
俺は冷蔵庫の扉を無理矢理閉じた…驚いたのかノリオが俺を見ている…呼びすてされた馴れ馴れしい…
「馴れ馴れしくするな……カップラーメンで良い……」
それを聞くや否やノリオがジャンパーを羽織り俺のパーカーを指さした
「そうか、ラーメンが好きなのか…よしっ食べに行こう!!」
パーカーを指差すだけでそれをもって俺に差し出すこともしない…少しは効いたみたいだ…
なのに食べに行こうなんて……
俺はあいつの車にのって居酒屋までつれてかれた
道中…行けるわけないと訴えてみたが…あんなに嬉しそうな顔に強くは言えなかった
居酒屋では目線が痛い…こんなとこいたくないのに…ノリオはラーメンを二つ頼んで申し訳なさげに日本酒も頼んだ
何を話すでもなく…ただラーメンを食べて帰った
なにか言いたげだったが…俺も聞きたいことがあったが…やめた…ノリオが日本酒を飲むことはなかった
家に帰るとまだ大陽が頭にあった…きっと行きたいところややりたいこと…話したいことがあったと思うけれどノリオは時おり俺を見るだけでなにも言い出さない…それどころか息苦しくなったのかそのままどこかへ出掛けていった
やっぱり俺といるのが嫌なんだ…所詮あいつも…あいつの子…
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