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第10話 ノリオ
ユウトが眠っている間に冷蔵庫を見てみた…独り暮らしでここまですっからかんだとお腹すくだろう…しかし私自身料理の経験もない
ユウトがいつもどんなのを食べているのか見てみたが…期限間近の薬味に黄ばんだ卵…他にはないかと回りも探してみたがあるのはカップラーメンだけ
栄養ちゃんと取っているのだろうか…私はただコンビニへ向かっていた
やはり栄養といえば魚だろう…だが苦手だったらどうしよう…不安はあったが買って帰った
焼魚なら母親によく作ってもらっていた…見よう見まねでやってはみたが…焼けたかどうかも分からない…次第に臭いがきつくなっていった
黒い煙も出てきている
焼魚ってこんなに黒かったか?
頭がこんがらがっていく…気付くとユウトが部屋の戸を押さえながら固まっている
なんとか事情を伝えようとするも焦りで上手く言えない…呆れているのか焼魚が苦手だとだけ言って目線をそらした
やっと言葉を発してくれた…私に向けて…
嬉しくてたまらない…しかし苦手だったか、もう見慣れた空の冷蔵庫を漁るふりをしてまた会話を試みた
馴れ馴れしい……言葉が脳を突っ切って心臓を突き刺した、そうか馴れ馴れしかったか
ユウトのためを思って…嬉しくてやったのに…言いたいことはたくさんあったがラーメンが好きならばそこでたくさん話せば良いかという結論に至った
しかし…ラーメンは居酒屋でしか食べたことがない…母親が小麦粉アレルギーでなければ作ってくれていただろうが…
「居酒屋に行くのか…未成年だぞ…」
近付くにつれユウトが焦っている…その顔はさほど変わっていないが声は震えている
聞き取れない不利をして
「ん?なんか言ったか」
なんて聞いていると
「いや…良い…」
観念したのか居酒屋を睨み付けている
やはり愛らしい…
なに味が好きなのか分からなかったが…酒でどうでも良いだろう
私は一つだけ日本酒を頼んだ…兄弟で酒を分け合う…憧れが達成する
しかしユウトが未成年であることを思い出した
酒の力を借りていろいろ話したかったがユウトは何も言ってこない…
私も車で来たことを思い出して飲めない…
何も話せずに居酒屋をあとにした…まだ明るい
なのにユウトは何も言わなかった
話したいことはたくさんあるがきっといきなりで驚いたのだろう…
気が休まるように私は外へ出て何をするわけでもなくただ公園を一周ぐらいした
お兄ちゃんと呼ばれたい…その思いだけが頭をめぐっていた
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