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第30話

深い昏倒から目覚めた桃太郎はそれから二日の間、まさに寝ても覚めてもといった調子で、代わる代わる鬼たちの摩羅を貪り貪られしておりました。口からも菊座からも溢れんばかりに子種を注がれ、幸せなことに腹も気持ちも飢えることがありません。 神通力で鬼たちの摩羅に力を与えれば子種の量も増えますので、その子種を得てまた神通力の源とします。そうしていわば子種と神通力の再生産を繰り返しておりましたので、桃太郎は精根尽き果てるどころかむしろ元気いっぱいで、思うまま摩羅をしゃぶり腰を振りまくっておりました。 甘露を出さずして絶頂を極める要領をすっかり掴んだ桃太郎に対し、鬼たちも心得たもので、桃太郎の摩羅を縛って甘露を吐き出させないよう協力しましたので、あまりの快感に気を失う以外では昏倒することもありませんでした。 鬼たちは鬼たちで神通力のおかげでいくらでも摩羅を勃てることができましたが、そうはいっても桃の精ではない身ですので腹も減ります。二匹の鬼が桃太郎と(まぐ)わう間に、残りの一匹が犬と猿と共に食糧を調達に行ったり見張りに立ったりと、上手に交代して過ごしておりました。もちろん犬と猿も、悲しげに鳴けば誰かしらが気づいて桃太郎の顔の前に連れてきて摩羅を桃太郎の口に捻じ込んでくれましたので、鬼たちへの信頼感は増しておりました。 そのようなことを繰り返していたため、二日の内に最早すっかり平等な輪番制ができあがりました。鬼たちも行動を共にする内に犬と猿と絆を深め、今や最初から鬼ヶ島で共に暮らしていたかのようにかわいがっております。 桃太郎以外にとって食糧が乏しいことは変わらず問題ではありましたが、黄鬼の巨大な摩羅の傘に再び口で挑みながらも、反り返った青鬼の摩羅に尻の中を()ねられてああんああんと喜んでいた桃太郎の頭上で、「キジガ タマゴヲ ウミマシタ!」「ヨカッタ デスネ!」という弾んだ会話が交わされていたので、多少は食糧事情も緩和されてきたのかもしれません。 このままこの幸せな暮らしを続けていけるのではないかと誰もが考え始めた三日目のお昼頃、岩場を見回っていた犬と猿が突然大声で騒ぎ出しました。 見張り当番であった青鬼が様子を見に行きますと、一人の男が巧みに竿を操り舟を漕いで近づいてくるのが見えます。 難破したわけでもない舟がやってくるなど平時では考えられないことでしたので、青鬼は大慌てで天幕に走って戻り、股間に桃太郎を乗せて腰を突き上げていた黄鬼に早口で「××××!」と報告をしました。 桃太郎は黄鬼の摩羅に跨って腰を振りながら、赤鬼の摩羅の先端をちゅうちゅうと吸うのに夢中で、赤鬼に「オトコガ キタッテ」と通訳してもらっても、ふぅんとしか思いませんでした。 しかし、急に動きを止めた黄鬼の摩羅を不満に思いながら渋々喘ぐのをやめると、何を察知したのかけたたましく鳴く雉の声が聞こえ、ようやくはっと思い出しました。 「ああ、多分その男は私の知り合いじゃな。そういえば様子を見に来るとか言うておった気がするわ」 摩羅尽くしの幸せな生活に、ここまで送り届けてくれた権座のことなどすっかり忘れていた桃太郎でしたが、律儀にやってきた実直な男をさすがに無視するわけにもいきません。第一、馬鹿真面目な権座のこと、放っておけば桃太郎の生死を確かめようと島に上陸しかねません。島の奥地で鬼の子種まみれになって喜んでいる桃太郎の姿を目にした日には、気が動転してしまうに決まっております。 『鬼退治の大願成就ならず、狼藉の限りを尽くされ正気を喪うとは、なんとおいたわしい…!』などと言って、かくなる上は己が代わって本願果たすべしと、鬼もろとも桃太郎を斬りにかからないとも限りません。 桃太郎は弥助や平次については顔も朧げで、もはや摩羅しかはっきりとは思い出せませんでしたが、生まれてこの方一番の飢えを味わわせられた権座の性質だけはしっかりと把握しておりました。 「面倒なことよのぅ」 酷い独り言を呟きながら、未練がましく腰を上下させて黄鬼の摩羅の傘をぐぽぐぽと味わってから、「うぅん」と悩ましい声を上げて尻を引き抜き、体中から滴る子種を適当に拭って久々に着物を身に着けました。 なんと言って権座を追い返そうかと思案していると、「モモタロサン…」と遠慮がちな、消え入りそうな黄鬼の声が背中に届きます。 振り返って見れば、鬼たちは三匹とも神妙な顔をしておりました。 「カエル デスカ?」 中途半端に放り出された摩羅を押さえつけながら、黄鬼が目を潤ませました。 「イヤ! ココニ イテクダサイ!」 いつもは明るい青鬼も、顔を歪めて縋り付いてきます。 赤鬼に至っては、いきりたった摩羅の上から腰布を巻き、床に広げた毛皮の下に隠していた鋭利な刃物を拾い上げ、 「モモタロサン カエル イヤ」 と爛々と目を見開いております。 鬼たちのその必死な様子を目にして、桃太郎はふわりと両手を広げて微笑みました。その微笑みは慈愛に満ち、まるで全ての生命の源であるかのように、何もかもを受け入れているように見えました。 鬼たちは知らず知らず跪き、両手を組み合わせて一心に桃太郎を見上げます。 元よりこのような三種三様の摩羅尽くし生活を手放す気などなかった桃太郎でしたが、己より遥かに強大な力を持った鬼たちが跪くのを目にし、子種に蕩かされた頭が酷く都合のいい策を弾き出しました。 桃太郎は、着物の裾で目元を覆い、よよとその場で泣き伏します。 「そなた達が私の命を何でも聞く手下となりせば、このような暮らしをいつまでも続けられようものを…!」

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