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伊織(36)*

 舌を絡め、擦り合い、互いの咥内を何度も行きして、熱を交換し合う。  優しくて、甘くて、激しくて、その全部が気持ちよくて、全部が蕩けだしていく。  キスしてるだけなのに、達してしまいそうに気持ちいい。  それはきっと教授が、潤さんを愛しているからなんだと、ぼんやりとした頭で考えていた。  教授のことが好き、大好き。幸せにしてあげたい。  僕には教授が必要で、  教授は、潤さんに似ている僕を必要としてくれる。  二人して依存の海に溺れてる。  それでいい。  それがいい。  口端から零れた唾液を追うように、教授の濡れた唇が顎から首へと伝っていく。 「…………っふあぁ……んっ」  キスだけで身体中から力が抜けている僕は、たったそれだけで、腰の奥に灯った熱が甘く疼き、快楽に濡れた声をあげてしまう。  高校生だった潤さんが、こんな風にはしたなく乱れるはずないのに。  だけど、教授の愛撫が気持ち良すぎるんだから仕方ないと、心の中で自分に言いわけをしながらも、声を堪えようと唇を噛んだ。 「……ッ、ん…………ぅ……っん」  唾液を含んだ熱い舌先に喉仏の辺りを優しくなぞられて、また我慢しきれない声が、きつく結んだ唇から漏れてしまう。  くすぐったくて、気持いい。  教授はそこを何度も舐めてくれる。まるで傷跡を癒すように。  ああ、昨日、教授の指の痕がついていたところだ……と思い出した。 「唇を噛むな。血が出てる」  不意に低い声で囁かれ、唇を奪われる。 「……っ、んん……」  僕の唇を覆い隠すように教授の唇が重なり、やわらかく吸われ、小さなリップ音が立った。 「声を出しなさい。我慢しなくていいから」 「……っあ、ふあ…………っ、ん」  耳元で囁かれ、耳殻を舌先で擽られて、僕はあっけなく、また乱れた声をあげてしまう。  熱を纏った舌が奥へと進み、鼓膜が水音に覆われる。 「……っは、あぁっ……や……ぁっ……」  甘ったれた声がどんどん勝手に口から零れだし、身を捩る。  こんな自分は恥ずかしい。こんなに乱れて恥ずかしい。なのに、パジャマのズボンの下で、とっくに形を変えて主張する自身がトロトロと涎を零し下着を濡らしてしまっている。そのことを教授に知られるのも恥ずかしかった。  気が付けば、いつの間にかパジャマのボタンが全て外されて、耳への愛撫を続けながら、教授の手が素肌に触れくる。 「あっ、あ……あぁん」  もう、感じすぎて、どこを触られても気持ちいい。まだ触れられてもいない胸の小さな粒が、すでに硬く尖って、その繊細な指先に触れられるのを待っていた。

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