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伊織(39)*
「でも……」
それでも……と身を捩ると、頬にそっと手を添えられて、触れるだけの優しいキスを落とされた。
「うちには、ローションのような気の利いた物は用意してないから、もっとしっかり濡らさないと……」
――傷つけたくないからね。と、続けられた言葉に胸の奥に小さな痛みを感じながらも、僕は漸く納得して、小さく頷いてみせた。
そんな風に、大切に大切に、愛されている潤さんが羨ましいと思う。
腰をぐっと持ち上げられて、教授の膝が腰の下に差し込まれ、体を二つに折り曲げた体勢で脚を開かされ、全てが晒されてしまう。
大きな掌が双丘を撫でながら割り開き、顔を近づけてくる教授の熱い息が窄まりにかかる。
至近距離で見られている。その視線に灼かれてしまいそう。
「……っ、あ……」
舌先が、会陰をなぞり、後孔に下りて、その周りに円を描きながら唾液を擦り付け、入り口を押し拡げるように挿ってくる。
くすぐったいのに確かな快感が走り、腹の奥の熱が疼き、ビクンと跳ねた腰を教授の両手に掴まれて、強く固定されてしまう。
「……っん、あ」
同時に、ぐちゅっと音を立たせて、唾液が中へと注ぎ込まれたのが分かる。
――すごく、熱い……。
熱を纏った舌先が内壁を擦り、中がとろとろに蕩けていく。
――あぁ……早く欲しい。
堪らず僕は手を伸ばし、腰の下に差し込まれている教授の膝の麻素材のズボンを掴んだ。
「……も…………、はやく……きて」
高校生の潤さんが、こんな風に自分から求めるなんて無いと思うけど、もう我慢できそうにない。
早く、そのズボンを脱いで、僕に見せて。僕を抱いて。
潤さんのことを知ってから、ずっと心の片隅にある、この言いようのない隙間を埋めて欲しい。
たったひと時の、一瞬だけでいい。僕を……僕だけを見て欲しい。
昨日、初めて抱かれたあの時、あの最後の瞬間のように。
あの一瞬、とても……幸せだと思った。
だから……。
もう一度、掴んだ教授のズボンを強く引けば、ゆっくりと顔を上げた教授の、情欲に濡れた瞳と視線が絡む。
――ああ……欲しくて堪らない。
「はやく……貴方が、欲し……っ」
荒い呼吸を吐きながら、途切れ途切れに言葉を零せば、ズボンを掴んでいた僕の手は細く長い指に絡め捕られ、覆いかぶさってきた教授に床に縫い止められて……。
「……んっ……ぅ」
噛みつくような激しいキスに、荒い呼吸も、声も、全部奪われる。
漸く唇が解放されて離れていく体を視線で追いかけると、膝立ちになった教授が、情欲に揺らめく漆黒の瞳で僕を見下ろしながらTシャツを脱ぎ捨てた。
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