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かりそめ(64)*
どちらからともなく唇が重なる。甘く食まれ、唇が触れる距離で微笑み合って、重ね直してもっと深く求めて。
離れないように舌を縺れさせると、どこからどこまでが自分のものなのか分からなくなっていく。
昔は、あんなにキスが嫌いだったのに……。
想いが通じ合っている相手とのキスは、どうしてこんなに気持ちがいいんだろう。
そんなことをボンヤリと考えているうちに、シャツを剥ぎ取るように脱がされて、その下に着ているTシャツの上から胸の尖りを摘まれる。
「……っ、ぁ……」
それだけで、甘い痺れに全身が侵されて、僕は重ねた唇の隙間から喘ぎ声を漏らしながら、背中を撓らせた。
昨夜も散々可愛がられたそこは、まだ触れられてもいなかったのにTシャツの上からでも、はっきりと形が分かるくらいに勃ち上がっている。
Tシャツの薄い生地が擦れるだけでも感じてしまうくらいに敏感になっていた。
「あ、ぁ……っ、ゃだ……」
Tシャツを胸の上までたくし上げられて、乳輪の輪郭をなぞるように舌が這わされる。
教授に開発されたせいで、そこはぷくりと膨らんで、前よりも色づいているような気がする。
それがすごく恥ずかしいのに……それだけじゃなくて。
「……そこばかり、されたら……イッちゃう」
最近は、それだけで軽く達ってしまう自分が、もっと恥ずかしい。
「もう? まだ周りしか触ってないのに?」
言われて顔が熱くなる。
教授の言う通り、まだ周りしか愛撫されてなくて、胸の頂はTシャツの上から摘まれただけで、直接触れられていない。
それが、もどかしくて余計に感じてしまう。次に貰える刺激に期待して。
「伊織?」
僕の名前を呼んで、教授はちょっと意地悪く微笑みながら、中心を外して、人差し指と中指を立てて周りを擽るように滑らせる。
じれったくて、自分で触ろうとする手を掴まれて、シーツに縫い付けられる。そして笑いながら訊いてくる。
「どうして欲しい?」
――もう……!
そうやって、いつも僕に言わせるんだから。
「ちゃんと……乳首も、して……?」
「どんな風に?」
「……舐めて……」
――こう? と言いながら、教授の熱い舌が尖った先端を転がした。もう片方の尖りは、指できゅっと摘ままれる。
「あっ……あ、……」
蕩けるような甘さと、鋭い痛みのような痺れが、同時にひとつの快感となって、ダイレクトに下腹に熱を送ってくる。
「……もっと……」
――もっと……なんて、そんな恥ずかしい言葉で強請れば、教授は望んだ通りの快楽をくれた。
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