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かりそめ(67)*
教授が僕の名前を呼び慣れない頃、それでも“伊織”と、ぎこちなく、照れくさそうに呼んでくれるのがちょっとくすぐったくて、嬉しかった。
だけどその反面、そのぎこちさが、いつか無くなる時がくるかもしれない……そう考えると怖かった。教授が僕を僕だと気づいてしまったら、僕はもうここに居られなくなるんじゃないかって、そんなことの心配ばかりしていて、ずっと怖かったのに。
今は、ぎこちなさが消えて、自然に“伊織”と、呼ばれるたびに……、ああ、僕は教授の、本当の恋人になれたんだと実感して、心の底から暖かいものが込み上げてきて、身体中が幸福に包まれる。
――僕は、この人に愛されている……。そして僕も……。
教授の指が僕の髪を優しく梳いてくれるのを心地良く感じながら、熱い竿を唇で扱く。喉に当たるくらいにまで呑み込んで、硬く張り詰めた先端が上顎に擦れるように上下すると、咥内が熱く蕩けて溢れ出る唾液が、くぐもった声と一緒に唇の端から零れていく。
「……っ、……ッ…………ん、ん」
咥内を蕩けさせる甘い快感が、じわじわと身体を熱く火照らせて、僕の半身から透明の液が滴り落ちてシーツを濡らしていた。
荒くなっていく教授の呼気が耳に届くと、もっと煽られてしまう。
浮き出た血管を感じながら舌を絡めて喉奥で締め付けると、少し余裕のなくなった声が僕を呼ぶ。
「……っ……伊織……」
途端に頭を後ろに引き剥がされてしまう。
「……は…………っ……」
息を乱したままの唇を塞がれて、荒々しく後ろに押し倒され、乱れたシーツに背中が沈む。
開かされた脚の間に教授が身体を割り込ませ、硬い先端を後孔にあてがい、耳元に低い声で囁いた。
「……こっちの中で達きたいから……」
「……っあ…………ぁ」
窄まりに円を描くように擦りつけられる濡れた熱と、低く響く声が耳から全身に伝わり、それだけで短い絶頂が突き抜けるほどに感じてしまう。
早く欲しくて臍の裏側が疼き、後ろの入口がひくついて、中の体温で熱くなったジェルが一筋溢れ出るのを感じた。
あてがわれた猛りに、無意識に窄まりを押し付けると、大きな手が宥めるように僕の腰を撫で上げた。
僕の誘いに応えてくれるように、教授が、ぐっと腰を入れてくる。
「……っあ、あ……ッ」
先端の太い部分が潜り込む。十分に慣らされていても、少しの圧迫感ときつさがあるけれど、自分の身体の中が教授の形を覚えていくような、この感覚がすごく好き。
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