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かりそめ(68)*

「……あっ、ぁ……」  ゆっくりと、硬いものが体内の隘路を押し広げながら進む感触に声が漏れる。 「……っ……」  最奥までぴったりと埋め込まれると、教授の唇からも熱い吐息と少し苦しそうな声が零れ落ちた。  熱に蕩けた眼差しがぶつかり、教授が覆いかぶさってきて、唇を塞がれる。 「……っん、…………ふ…………ぁ……」  濃厚に絡みついてくる舌に、僕も応えるように舌を伸ばした。  そうしながら、同時にゆっくりと教授が腰を動かしだす。  最初は馴染ませるように。長いストロークでぎりぎりまで引き抜かれ、また奥まで挿ってくる。 「んっ、ぁ……ふ、ぁ……ん」  重ねた唇の隙間からは、僕の愉悦の声がひっきりなしに漏れ始めた。  中に突き入れられるたびに、引き抜かれるたびに、硬い先端が前立腺を擦り上げ、腰の辺りから熱い疼きが湧き起こる。  同時に、すっかり僕の弱点となった胸の尖りを指先で捻られて、全身に甘い疼きが広がっていく。  僕は堪らず首を横に振ってキスを解き、喉の奥から絞り出すような嬌声をあげてしまう。 「……っ、あ、あぁ……っ、ん、ぁ……っ」  射精を伴わない狂おしい絶頂に、全部が侵食されていく。  身体が戦慄き、背中を反らし、顎を跳ね上げ、晒した喉元に教授が唇を押し当てた。 「……や、ぁあっ、あ、っん」  全部が性感帯になったみたいに、どこを触られても気持ちいい。それがずっと続いて終わらない。  擦り続けられている肉襞が強い収縮を繰り返し、熱い猛りに絡みつき蕩けだす。まるで僕の身体と教授の形が曖昧になって、ひとつになっていくような……。  この快楽は、教授としか味わえない。  “相思い、愛、想う” 愛し合う関係だからこそ、感じることのできる心地良さを、僕は教授と想いが通じ合ったことで初めて知ることができた。 「……伊織……」  甘い声で呼ばれて視線を上げると、切羽詰まったような余裕のない眼差しに見つめられた。  “伊織”と、呼んでくれるのが嬉しい。ぎこちなさが無くなって、自然に呼んでくれるのが嬉しい。  だから僕も、声に出してみたいと思う。  教授は、僕の、“先生”と呼ぶ声が好きだと言ってくれたけれど……。  時々は、違う呼び方をしてみたい……なんて、思うのはおかしいかな?  快感に震える手を伸ばし、愛しい人の頬を両手で包み視線を合わせた。 「……侑さん」  初めてその名前を口にしてみると、なんだか胸が熱くなり、なぜか涙が視界を潤ませた。

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