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かりそめ(69)*

 ――ああ……そうか。  名前で呼ぶと、教授との距離がもっと近くになった気がする。恋人よりも、もっと近い関係になれた気がする。だからこんなに嬉しいんだ。  教授も、そうなのかな……。  潤んだ視界の先で、僕を見下ろしている教授が、驚いたように目を見開いている。 「……侑さんが……好き」  口から勝手に零れ落ちる、想い。だけど呼び慣れてないから、かなり照れくさくて顔が熱くなる。それに……僕も、あの頃の教授に負けないくらいにぎこちない。 「侑さん……」  もう一度呼ぶと、腹の奥で教授のものがドクンと脈打って、また大きくなったのが伝わってくる。 「……っ、……」  ただそれだけで、身体が戦慄いた。 「俺も……好きだよ、伊織」  教授の声も、色を孕んで掠れている。 「侑さん」  僕は、思わず教授の首に腕を絡めて耳元に唇を寄せた。 「――――ずっと侑さんの傍に、いてもいい……?」  ほんのひと時だけじゃなく、誰かの代わりでもなく。  これからずっと、気が遠くなるくらいずっと、貴方と一緒にいたい。 「当たり前だ……」  教授はそう応えながら、くしゃりと僕の髪に指を絡めて、覗き込むように至近距離で見つめてくる。 「俺は、伊織とずっと一緒に生きていきたい」  ――え?  その言葉に反応して、中がびくんと震えてしまう。  それを隠したくて、なんだかプロポーズみたい……って言おうとしたら、唇を塞がれた。 「……っん、ん」  深く咥内を貪られ、緩やかだった律動が、急激に速くなっていく。 「……あっ、ああっ、ん」  僕の屹立は互いの腹に擦りつけられて、先走りが溢れ、速い律動のリズムに合わせるように零れる声が、朝の光が射し込む静かな部屋に響いてて……。 「……ああ、っ、ああ、っああ」  また、終わらない絶頂に身体を侵食される。  教授の身体に脚を絡めて、抽挿に合わせて腰を揺らした。 「……っ、伊織……すごい締めつけ……」  ――――持っていかれる……。と、教授の余裕のなくなった声が聞こえたのと同時に、熱い汗が頬に落ちてくる。  見上げると、情欲に濡れた瞳と視線がぶつかった。  少し切なげに眉を寄せるその表情が、壮絶な色香を漂わせていて、僕の中がまたきつく収縮してしまう。 「あっ、侑、さ……ああ、も……イく……」  前立腺への刺激と、腹部で擦り上げられるのとで、半身も限界を超えてきていた。 「伊織……一緒に……っ」  一際力強く、ぐっと最奥へ突き入れられて腰や太腿が小刻みに震え、目の前に閃光が走った瞬間、僕は互いの腹の間で白濁を放っていた。  同時に身体の奥深いところで、愛しい人の熱が弾けて広がっていくのを感じた。

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