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かりそめ(71)*

(――あ…………もしかして……)  教授は、僕と朔さんが一緒に行動することに少し敏感になっているところがあるのは知っている。沖縄空手に通うと言った時も、『朔と通うのか』と言って、最初はあまりいい顔をしなかった。  教授は最初から、朔さんに牽制するようなことを言っていたけれど……。でも、そんな心配はしなくて大丈夫だと思う。  元々朔さんは、教授のことが好きだったんだから……。僕に興味を持ったのも、僕と教授の関係に気が付いたからだと思うし……。  だけど……そうだな。不安な要素は取り除いておいた方がいいに決まってる。  僕はドライヤーを置いて、教授の広い背中に抱きついて、肩に顎を載せた。そして鏡の中の黒い瞳を視線を合わせる。 「……伊織?」 「僕は、侑さんのことしか見てないよ」  そう言って、腰に回した腕に力をこめて身体をぴったりと寄せると、鏡の中で教授の顔が、赤くなっていく。  耳元に口づけて、「大好きだよ。侑さん」と囁くと、くるりと振り返った教授に抱きすくめられて唇を塞がれてしまった。 「……っ、んん……」  いきなり唇を割り入ってきた舌に咥内を蹂躙され、背中に回った手が下へと下りてくる。下着しか着けていない双丘を強く揉みしだかれると、自然に熱の籠った吐息が零れた。 「……っ、ふ…………ぅ……ん」  また堪え性のない半身が、形を変え始めてしまう。 (…………だめ……これ以上は……)  そう思うのに、下腹の辺りに押し付けられている教授の熱を感じると、どうにも身体が熱くなってくる。 「……伊織が悪い」  キスの角度を変えながら低い声で囁かれ、劣情を孕んだ瞳に見つめられたら、抗えなくなる。 「……僕……だけが、悪いの?」  呼吸を乱しながら恨みがましく訴えて、教授に背を向けて洗面台に手をつくと、下着がずらされる。 「……俺、も……悪いけどね」  熱い吐息と共に、教授の低い声が耳の中に注がれて、硬い切っ先が尻の谷間をなぞる。 「……は……ぁ」  思わず、溜息のような息が漏れる。  その先端が熱く濡れているのを肌に感じて、僕は自ら腰を突き出すようにして、そこに擦りつけた。  さっきまで繋がっていた身体の中は、まだ熱く柔らかい。  顔を上げると、洗面台の鏡の中に熱に浮かされた二人の顔が映っていた。

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