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かりそめ(72)*
(――この調子だと、もう一度浴室に逆戻りかな……)
最初はそんなことを考えていたけれど、最奥まで突き上げられたら、どうでもよくなってしまう。
この後、沖縄空手の道場に行くことも、すっかり頭の中から消えていた。
鏡の中に映る自分は、Tシャツをたくし上げられて背後から回された手に胸の尖りを転がされながら、腰を打ちつけられて喘いでいる。
「空手に行くなら、ちょっと急がないといけないね?」
なのに、教授の囁く声が僕を現実へと引き戻す。僕はこんなに溺れているのに、教授はなんだか余裕がありそうで、ちょっと悔しい。
「う……っん、ああ……ッ」
突然教授の手が僕の屹立を上下に扱き、腰を打ち付ける速度を上げていく。『うん』と頷こうとした声は、切羽詰まった喘ぎ声に変わってしまった。
「ああっ、いきそ……、イく……っ」
「達っていいよ」
そう言った瞬間、腰を一層強く押し付けられて、硬い先端が奥を突き上げる。同時に射精を促すように蜜口を刺激され、水位が限界を越える。
「あ、あぁっ」
腰を痙攣させながら、勢いよく吐き出した白濁が教授の手と洗面台を汚してしまう。
「…………っ」
その後、数度腰を打ちつけた教授が、呻くような声を微かに零す。同時に、最奥へ熱い飛沫が叩きつけられるのを感じた。
身体の奥でじんわりと広がる熱に浸っていると、後ろから顎を捕えられて、荒い呼吸のまま肩越しに唇を塞がれる。
「やっぱり浴室をリフォームしようかな……」
「…………え?」
長いキスの後、教授が唐突に口にした言葉の意味は、達した後の余韻でぼんやりした頭では理解できなかった。
だって、後ろから貫かれたままの状態で、話すような内容とは、とても思えない。
笑っていいのか、真面目に返答すればいいのかさえも分からなかった。
反応できずに固まっていると、教授が腰を引いて繋がっていた身体を離す。
「…………ん……ぅ」
ずるりと中から出ていってしまう感触に、思わず声が漏れてしまう。同時に温かい粘液が後孔から溢れて、内腿をゆっくりと伝い落ちた。
教授がそれを掌で拭ってくれる。
「もう一度シャワー浴びるだろう? 掻き出さないといけないし」
「……え? あ、はい」
まだ頭がぼんやりしていて、思考回路が上手く働かない。僕は教授に手を引かれるまま、もう一度浴室へ向かった。
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