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甘い罠 30
一線を越えない理由を何度も聞こうとした。
けど、勘違いされそうで聞けなかった。
星川のことは嫌いじゃないが、まだセフレ以上としての感情は、ない……
……と思う。
いや、
本音は、“わからない”が一番正しいのかもしれない。
同情なのか、愛情なのか……
一回りも年下の生徒に全身で求められ、こんな俺を好きだと言ってくれる。
キスされる度、身体を重ねる度、それを日に日に強く感じるようになった。
そして、その想いが増す度に俺はどんどんと臆病になるような気がする。
「先生、こっち向いて?」
「なっ……んッ」
背中から抱きしめらたまま顎の輪郭を指先でなぞられると、慣れた手つきで顔を後ろに向けさせられ唇を押し付けられる。
そして“好き”をまた俺の身体中へと染み込ませる。
「……………んッ」
熱を持った舌が咥内を掻き回し、次第に俺もその熱い舌を追いかけてしまった。
息継ぎの間に漏れる吐息と一緒に繰り返す甘い囁き……
「………ッ………好き……です……」
その言葉にも俺の身体は熱く反応して、それにこんな風に夢中でキスに応えているのに、俺はまた“わからない”と位置付けして逃げようとしている。
自分でも飽きれるくらいズルい男だ。
激しさを増すばかりのキスは、そんなくだらない思考をも溶かすほどで、呼吸すらままならなくなる。
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