41 / 190

苦い過去 6

「僕もそんなことがきっかけなんて自分でも信じがたいんですけど、なんか……僕ならあんな顔絶対にさせないって、思ってしまったんですよね……。何も知らないのに可笑しいでしょ?」 そう苦笑いしながら火を付けていない俺の煙草を取り上げると、自分の口にくわえ、止めろと言う前にライターで火をつけてしまった。 「なにやってんだよ、未成年だろっ!!」 「僕、こう見えて負けず嫌いなんです。だから、絶対に負けたくなくて……先輩には。」 念を押すように、“絶対”ともう一度呟くと煙草を俺の口にくわえさせられた。 “絶対”とか…… 「…………やめろっ」 「え?」 「トラウマなんだよ………“絶対”って…」 思いっきり息を吸うと苦い味が口の中に充満して、灰色の気持ちが支配していく。 人の気持ちに絶対なんてないんだよ。 こいつだって、いつか女がいいとか言い出すに違いない。そして、俺はまた捨てられる。 「なら……僕がそのトラウマ、克服させてみせます。言ったでしょう?……絶対に裏切らないって。」 「だからっ!どうしてそこまで!」 こいつの自信が段々と鬱陶しくなって、俺は荒々しく煙草を灰皿に揉み消すと、キツく星川を睨んだ。

ともだちにシェアしよう!