73 / 190
儚い感情 6
たくっ……またくだらない“禁断”話か?
「今度はなんだよ、またどうせくだらない話だろ?」
「これはちゃんとリアル話ですって。」
「リアル?おまえ不倫でもしてんのか?」
「ちょっ、違いますよ!俺のことじゃないってさっきから言ってるじゃないですか。そーじゃなくて、チラッと噂で聞いたんですけど、うちの学校の理事長の孫ってうちに在学中だった時に……教師と付き合ったらしいですよ………えっ?!ちょっ…!!」
一瞬、グラスを持つ手に力が入らなくなった。
「先生っ…!先生っ…大丈夫ですかっ?!」
俺の手の内から滑り落ちたグラス。
そこからこぼれ出た琥珀色の液体が気付いたらテーブル一面に広がっていて、俺は慌てる朝比奈の声で我にかえった。
「ちょっ…何やってるんですか!?あーあ、テーブルビールまみれっすよっ…もー」
「………すまん。つい、手が…滑って……」
苦し紛れの言い訳を使ってなんとか冷静さを取り戻そうとするが、俺の心臓の鼓動はあり得ないくらいの早さで脈打っている。
その早さを感じる度、これほどまでに自分が動揺しているのかと、気付かされているようだった────
ともだちにシェアしよう!