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儚い感情 19
デートがしたいと言い出した星川の真意は全く分からないが……
「ああ。別に…いいけど。」
特に拒む理由がないから二つ返事で了承してしまった。
ただし、学校の誰かに見られたら厄介だから少し遠くまで出向くことを条件として付けた。
「……ありがとうございます。僕、先生と一緒に行きたいとこがあるんです。」
「行きたいとこ?」
俺の隣で珍しく嬉しそうな顔をしている星川が、一緒に海に行きたいと言ってきた。
「何で海?まだ寒いだろ。」
「いいんですよ。夏より冬の海が好きなんです。」
「ふーん、冬っつーかどっちかって言うと春だけど。まぁ、別に行ってもいいよ。」
海は夏に行くもんだろと口にしようとしてふと思った。
星川には夏より冬の海の方が似合うかもな…なんて……なんとなく、なんとなくそう思った。
夏の海ではしゃくよりも冬の海を静かに眺める方が星川らしい。
「先生?聞いてます?」
「……あ、ごめん」
「いつ行きます?」
「あ?」
「あ?じゃないですよ、デート。いつがいいですか?」
「あーそうだなぁ。来週の土曜とかでいいんじゃね?」
「分かりました。楽しみにしてます。」
「あ…あぁ。」
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──────
そんな訳で数日前に星川がうちに来た時に決まってしまった、デート。
1週間なんてあっという間で気付いたら明日がその日。
デート……か。
ただ一緒に出掛けるってだけなのに、あれから毎日なんとなく気持ちが浮わついている。
なんだよ、たくっ…
よく分からないモヤモヤした気持ちのまま、いつもの準備室で煙草を吸いながら窓際で外を眺めていた。
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