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蒼い純情 4

──────── ────── その後はいたって普通に会話をして、もちろん煙草を取られることもなく…赤信号でキスされることもなかった。 そんなこんなで途中で昼食をとり、海が目の前に現れた頃には、普段滅多に運転しないせいかすっかり疲れ果ててしまった。 「海、見えてきましたねっ!」 「だな。今駐車場探すから待ってろ。」 「はいっ。」 海一つでこんな嬉しそうにしてる星川は正直意外だった。 いつもはさほど感情を表にしないで落ち着いているのだが、今は見るからに嬉しそう。 「おまえ、海そんな好きなのか?」 「どうしてですか?」 「いや、なんか嬉しそうだからさ。」 「そう見えますか?」 「あぁ。」 「嬉しい………そうですね、嬉しいです。」 視界の端でニコニコと話す星川は無邪気で、俺には到底忘れてしまったいい顔をしている。 ……こんな顔も出来るんじゃねーか。 「……なんか、いいな。」 「え?何がですか?」 「なんか可愛いなと思っただけ。あ、あれ駐車場だよな…空いてっかな。」 特別な意味なんてない。ただ、そう素直に思ったから口にしただけ。 だけど、星川のそんな顔を見ていたら、自分もなんだか嬉しくなった気がした。 でも、それがどうしてかなんてやっぱり考えない俺の頭の中は、車を停めることでいっぱいですぐに忘れてしまう。 特別なことなんてないから。 気にも止めていないからだろ? それが恋愛感情なんかに結び付くわけない。 だから、星川の表情が微妙に変化したことなんて、俺には到底気付くはずもなかった。

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