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蒼い純情 7
そう俺の手を強く握りながら、星川が軽い足取りで砂浜を歩いていく。
「お、おい!ちょっ、星川!」
「大丈夫ですよ、誰もいないし、誰も僕たちのことなんて気にも止めてないですから。」
「いや、そういう事じゃなくて……」
「じゃあ、こう言うことですか?」
そう言って繋いだ手を更に絡めながら、空いたもう片方の手を俺の腰に回してきた。
「お、お……んッ」
そのまま口を塞がれ、一瞬で空気が変わっていく。
波の音と、
星川の息遣い、
その狭間を漂いながら、俺は……微かな安らぎみたいなものを感じた。
なんだ、この感覚は。
なんで、俺……
「小太郎さん……?」
「いや、なんでもない。」
そして、
昨日、洵也にされたキスも……
何故か、思い出してしまった。
なんでこんなときに、洵也とのこと思い出すんだ。
「波が少し高くなってきましたね。」
でも、そんな星川の声が耳元に響いて、すぐにそんな考えも消えてしまった。
*
「小太郎さん、海ってあんまり来ないですか?」
「うーん、あんま来ねーな。暑いの苦手だし、海自体あんまり好きじゃないな。」
「そうなんですか。」
ちょうど海岸に流れ着いた流木を見つけ、そこに二人腰掛けながら海を眺めゆっくりと時を感じる。
「さっきも言ったようにインドア派だし。」
「そうでしたね。僕も海はそれほど好きじゃないです。」
「え?だっておまえさっき……」
「小太郎さんが一緒だからですよ。」
「は?!」
「あなたが、一緒だから嬉しいんです。」
「まさか……」
「女の子みたいだって笑ってもいいですよ?好きな人と来る海が好きなんてロマンチストすぎますからね。」
「いや、笑わないけど……意外だなぁとは思った。」
男らしいとこもあればこんな一面もあるのか。
なんだか不思議な魅力があるな……
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