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蒼い純情 12
だけど、気付いたら俺はその頬に手を伸ばしていて、
「小太郎……さん?!」
星川は心底びっくりした顔でこっちを向き、俺の名を呼んだまま固まっている。
「────こっち」
「え?」
「もっと、こっち……向け」
そしてそのまま頬に置いた手を滑らせ、後頭部へと移動させると、ぐっとこっちへ力を入れながら引き寄せた。
「あ、……あの」
なんでかは分からない。
だけど、衝動的にそんなことをしてしまった。
全く……こんなことして俺はどうしたいんだ。
更に分からなくなる気持ちは俺を混乱させるばかりで、だけどこのまま止めるわけもにもいかず……
星川の言葉より先に、俺は勢いまかせにその口を塞いでいた。
「……んッ」
唇が重なる瞬間、星川が見せた表情は一瞬だったけれど、それでも俺の脳裏にはしっかり焼き付いた。
……どうして……
そんな顔をしていた。
そうだよな、そう思うのも無理ない。
だって、俺がこいつにキスする理由なんてないんだから。
「……ッ……小太郎さん」
「……ッ……今日は居てやるよ」
「え?」
「今日はずっと一緒に居てやる。」
言葉よりも先にそこにあるのは何なのか……
俺はそんなことをぼんやりと考えながら、
星川の返事を待たずにもう一度口づけた。
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