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蒼い純情 23

次に目を覚ましたのは雨の音……ではなく、バスルームから聞こえるシャワーの水音だった。 深い眠りに就いていたのだろう、一瞬ここがどこか分からなくて、視界に入った趣味の悪い照明で思い出し、思わずため息が零れた。 「何やってんだよな……俺は」 ため息と一緒に吐き出された言葉は乾いた空気に混ざってすぐに消えていく。 そして、一人で眠る俺に掛けられたシーツはやけに冷たくて……その冷たさも妙に身に染みた。 外からの光は一切入らない。 この部屋は、ある意味非現実的で、俺たちの関係をも惑わすような空間だ。 だから理性を崩したら大変なことになるって分かってるはずだった。 だけど、こうして生徒と一夜を共にしてしまったことで確実に何かがずれてしまった気がする。 別に、同性だから……とか逃げ道は一応ある。 でも、そんな簡単なモノじゃないんだよな。 シーツを頭まですっぽり被って、もう一度深いため息を吐いてまた自暴自棄になる。 「……めんどくせーな。」 「小太郎さん?」 いつの間にかベットに戻って来た星川に呼ばれ、ハッとしてシーツを避けた。 「小太郎さんもシャワー浴びます?」 「あ……あぁ。つか、今何時?」 「朝の10時過ぎた頃です。チェックアウトは12時なんでまだ時間はありますけど。」 「じゃあ、シャワー浴びてくる」 「あの……」 「ん?」 「いや、なんでもないです。」 * さっき、何を言いたかったんだ……あいつ。 熱めに設定したままのシャワーを頭から一気に浴びながら、星川のことばかりが脳裏を掻き乱す。 それに、“めどくさい”と言ったのも聞こえてたんだろうか。 いらぬことを考えながら身体を洗っていると、ふと鏡に写る自分の首筋に目が止まった。 これ…… 赤く内出血しているそこを人差し指と中指の腹でなぞる。 キス、マーク…… これ、洵也?いや、星川かも…… 昨夜の行為が半分くらいから記憶になく、このキスマークがどちらが付けたのかも全く覚えてない。 俺……最低だな。 ぽつりと呟く声はやけに室内に響いて、俺の心にぐさりと突き刺さった。

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