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淡いキス 5

* 「とりあえず生でいいですよね?」 「ああ……」 「あとは……適当に頼んじゃいますね。」 放課後、ご丁寧に職員室で待っていた朝比奈。 そして、駅前のいつもの居酒屋に連れてこられ、何故か今日は個室に通された。 「つか、なんで個室なんだよ。」 「え?あ、なんとなくです。個室の方がこの前よりゆっくり話出来るかなぁって思ったんで。」 特に神妙な……て、わけじゃない空気は朝比奈の性格なのかもしれないが、それでもいつもと違う空気が流れているのは感じていた。 だから、なるべくならさっさと話を終わらせて帰りたい。 「ゆっくりするつもりはねーし。とりあえず大事な話ってなんなんだよ。」 「相変わらず急かしますねー。とりあえず乾杯しましょう。」 週始まりの平日だけに空いていたせいか、そうこうしてるうちにすぐにビールが運ばれてきて、俺たちはとりあえず乾杯をした。 「今日もお疲れ様でしたーかんぱーい!」 「はい、乾杯。」 「ちょっとーテンション低いですよー」 「うるせーな、いつもこのくらいだろ。いいんだよ、若くねーんだから。」 「もー、先生て彼女と一緒の時もそんなテンション低いんですか?つーか、不機嫌?」 「は?!んなことどうでもいいだろ!それに彼女なんていねーし。」 「彼女……」 「え……?」 「彼女────は、ねぇ?」 「な、なんだよ。」 朝比奈の含みを持たせた返しにグラスを傾けてた手が一瞬止まる。 そして、タイミングよく料理が運ばれてきて、話が中断されたと思いきや、 「話の続きですけどね、先生……」 突然話は再開された。

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