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淡いキス 6

「彼女……じゃなくて、彼氏……ですよね?」 「………………え」 適当にはぐらかせばできた大人だろうに、俺にはその器はないらしい。 朝比奈の言葉に頭の中が真っ白になった俺は、言葉を詰まらせ、あきらかに動揺しているような声を出してしまった。 「それに……それ、あの生徒に付けられたんですか?」 そして、追い討ちをかけるように持っていた焼き鳥の串を俺の首筋の方へ向け真顔で聞いてきた。 「おま……なに……言ってんの」 「今日ずっとちらちら見えてましたよ、キスマーク。まぁ、今日だけじゃないですけどね。昨日、たまたま見ちゃったんですよ駅前で。先生がキスされてるとこ。」 昨日といえば、星川以外いない。 でも、キスされたのは車内だったし、雨も降っていたし…… 「な、なんで俺なんだよ。似た誰か……」 そう、似た誰かかもしれねーじゃん。 「先生でしたよ。」 だけど朝比奈は、躊躇することなくそうきっぱりと言い放った。

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