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淡いキス 9
それに、
「それに、その関係も昨日で終わったから朝比奈が心配することはない。」
「終わった?そうなんですか?何か理由があったんですか?」
「理由……」
────やっぱり、先生が好きなのは桐谷先輩だから────
「理由なんて……あいつが飽きただけだろ。」
朝比奈にはそう嘘をついてしまった。
星川に言われたことは何故か隠して。
「だから、もういいんだよ。俺のことはほっといてくれ。」
「そう、ですか。」
「じゃあ、もう話は終わりだ。帰ろう。」
正直これ以上この話をしたくないし、もう終わった話をしていたって仕方ない。
そう何かに逃げるように足早に席を立ち伝票を握った。
*
「先生、俺が前に言ったこと覚えてますか?」
「言ったこと?」
居酒屋を出て薄暗い駅までの道のりを歩きながら朝比奈が静かに口を開いた。
「先生は、どこかほっとけないって話です。」
「ああ、言われたな。それがどうした。」
「なんだか今日の先生見てたら更にそう思いましたよ。」
「はぁ?何言ってんだよ。」
「年上なのにほっとけない……だから年下は夢中になるのかなぁって。」
「知らねーよ。」
朝比奈が言うその“ほっとけない”が俺には分からない。
別に普通に生きてるだけだし。
「なんか、先生は……小悪魔みたいですよ。」
そして、赤信号で止まった横断歩道の前で、朝比奈が突然そんなおかしなことを言い出した。
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