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淡いキス 10

「女じゃあるまいし…小悪魔って…俺は別に普通だし…」 「多分、そう言うとこがじゃないですか?」 「は?」 朝比奈が言ってることがまったく意味不明で聞き返そうとした時、前から歩いてくる人影に一瞬息が止まった。 ま……まさか…… いや、あれは間違いない。 横断歩道の真ん中で擦れ違ったのは… 知らない女と歩く星川で、 「先生?…望月先生?」 「あ、え?…あ、すまん…」 朝比奈に数回呼ばれるまで、俺はそれに釘付けになっていた。 暗がりだったため、多分星川は気づいてないはず。 だけど俺からはしっかり顔まで見えたし、 それに、 俺には見せたことない柔らかい表情で笑ってた。 「先生?彼……」 「だから俺には飽きたからだってさっき言った通りだろ?あいつだってあれが普通なんだよ。俺なんかより…普通に女と付き合った方がいい。」 俺よりも、その方がいいんだ。 そう…だよ…な… それでいいんだ。 「────だから、みんな夢中になるんですね」 そんな自問自答を脳内で繰り広げていた時に、横断歩道を渡り終わったとこで朝比奈が突然そんなことを呟いた。 「は?さっきからなんなんだよ。」 「彼や洵也くんが先生に夢中になるの…なんとなく分かった気がします。そんな顔するからほっとけなくなるんじゃないですか?」 *

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