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淡いキス 11

“────先生は、年下を夢中にさせる何かを持ってるんですよ。うちに帰って、自分の顔よーく見てみてください、わかりますから” 別れ際にそんなことを言って去って行った朝比奈。 そのあとマンションに帰り、うがい手洗いをするついでに洗面台の鏡で自分の顔をまじまじと見てみる。 年下を夢中に…… そんなプレイボーイみてーな自分知らねーし。 つか、別にいたって普通のくたびれたおっさんの顔だし。 濡れた手で自分の頬に触れながら、鏡の中の自分に向かって深いため息と一緒に悪態を吐く。 ありえないだろ…… やっぱりそんなことないと真っ向から否定して、蛇口から流れる水を勢いよく止め無理矢理自己完結させようとした。 よく見ろって言われたって…… あーもう、わっかんねーよ! 俺はそんなモテるわけでもねーし、ましてや小悪魔なんかでもない。 はぁ~もういいや。 明日も仕事だしさっさと寝よ。 いくら見ててもわかんねーし、めんどくさいからもう寝てしまおうと、乱暴にドアを開け洗面所を後にし寝室に行こうとした時、タイミングよく玄関のインターホンが鳴った。 は?誰だよ、こんな時間に。 ピンポーンと定期的に鳴るインターホンにちょっとイライラしながら玄関へ向かう。 たくっ…うるせーな。 悪態を吐きながらドアを開け、そこに立っていたのは…… 「……おまえ」 「よかった、居て。この前の返事…聞きに来た。」 「洵也……」 そこには、 思いつめたような表情の洵也がいた。

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