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淡いキス 14

肩を掴む洵也の手に力が入り、勢いで俺たちは玄関の中へと。 そのまま玄関のドアが閉まり、バンッと言う鈍い音と共にドアに身体を押し付けられた。 「洵也っ離れろっ!」 「嫌に決まってんだろ!何を言いかけたんだよ!言えよ!」 次第に強くなる腕の力とは裏腹に、 鋭い表情の奥に微かに見えた不安気な眼差しで、 俺の思考は一時ストップする…… 「……小太郎……俺は……本気でおまえのことが……好きなんだよ……だから、全部……言って……腹ん中のもん全部…言って……」 「………おまっ……」 「………愛してる……信じてくれ……」 あんなに忘れたいと思って、トラウマにまでなった苦い思い出なのに、 あんなに二度と本気の恋なんてしないと思ったのに、 俺の肩に額を付け、俯きそう呟く洵也を見ていたら…… 何故か全て浄化されてくような気がしてしまった。 馬鹿だよな…… そうだよ、俺、いい年して馬鹿だと思う。 そして洵也の温もりを感じながら妙に納得しいくと同時に、 無性に愛おしく、 思ってしまった──── 「洵也………俺、おまえにフラれた時、すげーショックだった………」 そして、 気付いたらそんなことを口走って、 意味なんてないって分かってるのに…… 軽々しくこんなこと言っちゃ行けないって頭では分かってるのに…… 「………お前のこと、 本気で好きだった……から……」 今更どうにもならない過去を引っばり出して、言ってはいけない気持ちを言葉にしてしまった……

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