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年下の彼 4

* 「朝比奈、明日からよろしくな。」 「望月先生、突然休暇取るとか何かあったんですか?」 「いや、別に。ちょっとゆっくりしようかなって思っただけだよ。とりあえずもうすぐ春休みだし、仕事も一段落してるし、たまにはいいかなぁって。」 「確かに先生て有給とか滅多に使ってないみたいだしたまには…」 「そ、だからたまには…じゃあな。」 今期はクラスを受け持ってない為、この時期の休暇も特に問題はなかったが、この時期だからか朝比奈みたいに不思議がられることが多く、なんでもないと作り笑いをするのに一苦労だった。 急に休暇を取った理由は、ゆっくりしたかったのは本当。 あと一つ、ゆっくりあいつらの事を考えたかったから。 俺の答えで2人の将来が変わる。 だから、ちゃんと考えなきゃいけないんだと。 こんな30過ぎのおっさんのどこがいいのか分からないが、2人は真剣なんだよな。 いつまでもフラフラしてたらダメなんだよなって。 週末には洵也がアメリカへ旅立つ。 それまでに答えを出さないと…… そんなことを考えながら荷物を整理していたからか、ふとした拍子に鞄をひっくり返してしまった。 あーあ…… たくっ……何やってんだよ。 ばらまいてしまった中身を一つずつ広い鞄の中へ仕舞い、自分に悪態吐きながらその動作をひたすら繰り返す。 そしてそれに手を伸ばし拾い上げた時、何故かとてつもなく胸が苦しくなる自分がいた。 なに……動揺してんだよ…… こんなんじゃ正確な判断ができないじゃないか……しっかりしろよ。 自分を奮い立たせるように気持ちを切り替え、勢いよく鞄のファスナーを閉め職員室を後にした。

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