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第2話「コレクション」

「ショーケースには触れないで下さい。」 高橋の眼鏡がギラリと光った。 部屋のウォークインクローゼットの中には、背面ミラーのガラス製ショーケースがあり、メイド服姿の少女のドールが整然と並べられていた。 何も違和感が無かった。部屋も本人も清潔感はあるが、オタク臭は隠せない。 最悪、ショーケースの中身が、エロいフィギュアであっても驚きはしなかった。 「可愛い娘達なんです。」 気付くと高橋は自分の世界だった。ボソボソと独り言の様に何かを呟き、ドールを手に取ると撫でたり、着せ替えたり、髪をとかしたり、趣味を満喫していた。 なるべく邪魔をしない様、存在感を消し掃除に集中する。 普段はあまり話さない高橋だが、ドールの話になると別だった。これ見よがしに自ら話し掛けてきた。来るものは(こば)まない主義だ。掃除の手を止め向き直った。 いつもより声の調子が高い。興奮すると早口になるのに、決して敬語を崩さないのが可笑しかった。 話を聞くだけならと、時間の許す限り聞き役に徹した。これなら堂々と家事代行の仕事もサボれる。 熱心に話を聞いていると、どんどんいらない知識が身に付いていった。話しの内容が濃くなるにつれて、なぜか思考が閉鎖的になるのを感じた。 これがオタク特有の思考回路なのかと関心していると、飛んでも無い提案が持ち掛けられた。 「専属メイドになってくれませんか。」 「はぁっ!?」 メイドじゃなく執事だろと、心の中でツッコミをいれたが、問題はそこでは無い。 「…えっと、専属メイドってなんっすか。」 「いつも通り仕事をして、最後の1時間だけドールになって下さい。その間はドールに求める以上の事はしません。七瀬君は何もしなくて良いです。」 何か如何わしい事でもされるのだろうかと不審に思っていると、性的な接触はしないと約束された。 高橋の熱意は熱く、あの手この手でグイグイと迫ってくる。とどめに倍の時給を提示され、それならば承諾した。 「宜しくお願いします。ご主人様。」 めでたく専属メイドへ転職した。

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