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第3話「素足」

専属メイドとして初仕事。 いつも通り家事代行の仕事を三時間みっちり行うと、居室にお茶と菓子が用意されていた。 「お疲れ様でした。どうぞ飲んで下さい。」 「あざーす。」 ついでに菓子にも手を伸ばす。疲れていたのでチョコレートを口に運ぶと、甘くなくてガッカリした。 「血糖値が急上昇すると余計に疲れますよ。疲れたなら、そこのベッドで休んで下さい。」 無遠慮にベッドに飛び込むと、今までに感じた事の無い寝心地の良さに思わず顔を(うず)めた。 「うわぁ〜、気持ちいい!」 「高級ホテルで使われているのと同じメーカーのものですよ。そろそろ、身体に触らせてもらえますか。」 はいはいと仰向けになると、初めて見る天上に気付いた。照明の掃除もしなければと、ぼんやり考えていた。 高橋はベッドの横に(ひざ)まずいた体勢で、頭から順に撫でていった。 気恥ずかしさから目を閉じると、制限された視覚のせいで感覚が鋭くなり、全身を辿(たど)る指先の感触が鮮明になった。 太股(ふともも)からふくらはぎを撫でたところで手が止まる。 「ズボンも脱いでもらえませんか。」 素足を触りたいと嘆願され、渋々ズボンを脱ぎ生足をさらけ出した。 「思ったより綺麗な足ですね。」 片足の膝を持ち上げられ太股に頬擦りされる。 閉じていた目を薄く開き見下ろすと、自分の素足に陶酔しきっている高橋の姿が滑稽だった。 高橋はうっとりとした表情で、さらに太股を上下に擦ったり揉んだりしながら堪能していた。 「ドールにも、この感触があれば…。」 内股に指先が伸びた瞬間、下半身がじんわり熱を帯びはじめた。ボクサーパンツの生地を押し上げ、徐々に存在感を増していく。 「…あっ、…ちょっと待って…っん!!」 恥ずかしさに思わず高橋を突き放し、反応した中心部を毛布で隠した。 高橋も予想外の出来事に慌てた様子だ。 「ごめん。」 必死で謝る姿に思わず背を向けると、高橋が背中にそっと手を添えてきた。 熱が引くのを待つ間、頭の中はぐるぐると忙しない想いを巡らせていた。 なぜこうなった。これは不慮の事故と言って良いのか。また起こり得る事態なのか。何か対策はとれないのか。自分に出来る事は何か。 とりあえず、けじめとして高橋に頭を下げる事にした。 「今日はすみませんっした。」 困り顔で薄い笑みを浮かべる高橋に、とても申し訳なく思った。

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