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第6話「友人」

(side takahashi) 幼い頃から生き物は苦手だ。 「ひろとくん、カブトムシあげるー。」 「…ひぃぃっ!!…い、いらないよ。」 人間とは異なる容姿、臭い、予測不能な動き、能力。気持ち悪いとしか言い様がない。 安全な室内で女の子と遊ぶ方がマシだった。 中学生になり思春期になると、自分とは異なる性への不快感から、女性にも苦手意識を持つようになった。 それからはオタクと呼ばれる人種の人々と、行動を共にする様になったが、彼ら特有の言語や、興味の対象には共感が出来なかった。 勉強ばかりしていたおかげで、高校は都内でもそこそこの進学校に通う事が出来た。そこで生涯の友と出会う。 「長谷川 要(はせがわ かなめ)です。横浜から引っ越して来ました。宜しくお願いします。」 同じクラスの中でも、長谷川は一際目立って見えた。決して派手では無いが、独特の雰囲気がある。 物静かで(おだ)やかな性格から、同級生からも王子ともてはやされていたが、一線引かれる存在でもあった。 お互い一人でいる事が多く、席が隣同士なこともあり、自然と仲良くなった。 長谷川は趣味で洋服作りをしていた。家に遊びに行くと、部屋の中には所狭(ところせま)しと服や生地が並んでいた。 「要くん、これは何?」 そこで人生初の一目惚れをした。相手はスーパードルフィーと言う人形だった。彼女は衣装製作の為に一時的に預けられていた。帰る家がある。 それならばと、専門店を紹介してもらいお気に入りの娘と出会った。手に入れるのに十万円はくだらなかったが、躊躇(ためら)うことなく貯蓄を崩した。 メンテナンスや衣装などで、その後もかさむ費用に悩まされたが、大切な家族の為と思えばアルバイトさえも苦にはならなかった。 「作ったからあげる。」 誕生日に長谷川からSD用のメイド服をプレゼントされた。ドレスは何着か持っていたが、メイド服ははじめてだった。 お姫様だった娘がメイドになると、一方通行だった想いが通じた気がして嬉しかった。長谷川に強引に金銭を支払い、様々なメイド服を作ってもらった。 「広人にはこんな服が似合うよ。」 無頓着だった私服のコーディネートも、娘と釣り合う様に長谷川が見立ててくれた。今では正式なパーソナルスタイリストだ。 高校を卒業すると、長谷川は洋服の勉強をする為に海外留学をし、何年か修行をした後に一軒家を改装し店をオープンさせた。

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